しょーとストーリー
イヤじゃなくなるクスリ
ああ、いやだ
何で仕事ってこんなに辛いんだ
仕事中はどうして時間が止まってるんだ
千年経っても5時はやって来ない
毎日同じことの繰り返し
食事を作り、洗濯をし、家族を待つ
シジフォスだって私よりは幸福なはず
だって石が転がるっていう変化があるもの
先生の顔は能面のようだ
君たちだって、やればできる
呪文のように繰り返す
クラスの平均点が上がりましたと喜んでいる先生
やる気になったからじゃないよ
あんたがウザイからだよ
何にも言われないように点を取ってるだけ
***
世の中にはイヤな事が多すぎ
不満を呼び犯罪や諍い(大きなものは戦争)を起こす
でも世の中にはとても環境が悪くても(貧しいとか)
幸福だと笑っている人もいるし
人がうらやむような生活なのに満たされないと嘆く人もいる
イヤか、楽しいかは
ただの気分次第って事だ
そこで出来るべくしてできたのがこのクスリ
イヤだなと思う気持ちを楽しい気分に転換させる
***
私も日々疲れている
早速飲もうと思う
***
薬を飲んで数日たった
体にも精神状態にも変化は無い
でも!仕事がとても楽しい
大嫌いだった課長も、いい所ばかり見えてきた
イヤミを連発するブスなあの娘も
几帳面で清楚な娘だったのだと感激
***
社会全体が変化
皆イイ人で、イヤな事はない
まさに楽園
***
毎日満たされて楽しいが
魂を揺さぶられるような感激というものが
失われたように感じる
でも、これでいいのかもしれない
***
その変化は私だけじゃなく他の人々にもやってきた
副作用か?
それは、気分の悪い事が消えたために
気分のいい事に対して不安を感じたり怒ったり
そんな場面が少しづつ増えてきたのだ
大丈夫か?
***
不安はひどくなって
やさしくされたり、楽しかったりするほどに
心がどす黒く染まっていくみたいだ
犯罪もゼロだったのに少しづつ増えている
***
結局あれからクスリの作用が切れて
元の精神状態に戻った
社会も同様に、元のイヤな事だらけの社会に。
でも不思議な事にクスリの改善(副作用)の研究を
求める声はほとんど無い
皆気がついたのかもしれない
イヤな事ばかりの世の中だから
ほんの少しの楽しみが、とても幸福なのだと
月曜日は会社
日曜の夜はこの世の終わりのような気分になる
(サザエさん症候群 苦笑)
でも、この苦しみこそ楽しみのエッセンスなんだ
同じ気分であろう満員電車の同志たちの
暗い顔を励みに、1日がんばろう・・・(終)
***************************
毎週月曜の朝は、イヤでイヤでたまりません
仕事が単調で5時までが本当にツライ
その間頭の中で密かに、考え事をしたり(夕食の献立とか
ショートのネタを考えたりとか 笑)するけれど限界があります
友達ができたり、人間関係とかいいのが救い
仕事自体が全く好きになれない、という経験は初めてです
(いわゆる派遣社員ですが工場に派遣されています
工場は初めてだけど、年齢的に40代なので仕方ないです)
だから長い時間辛さが楽しさに変わればいいなと
願いを込めて作った話です
でも、仕事がツライから家に帰るのが
すごい嬉しいけどね
話は違うけれど以前著名人がトヨタの期間工の若者との
飲み屋の会話を自分のHPに載せて彼らを批判したのが
逆に多くの人々の非難を浴びてしまった、というのがありましたね
工員というのは大変です。私も日々骨身にしみてます
まして期間工(派遣ですよね)ならば色々不安もあるでしょう
そんな彼らが仕事の後、飲み屋でくつろぐ時
色々な話もするでしょう
それを彼らがダメなような事をWEBに載せるなんて
やっぱり労働者を下に見てる、ちょっとガッカリ
それにしても著名人が大企業を名指しして
載せるとは、驚きです。素人ではないのだから
騒ぎになると予想できたと思うのに。
トヨタだっていい気分しないでしょう
まあ、失言は誰にだってあるし
工員の気持ちをわかってもらえればうれしいけれど
やっぱりわからないでしょうね
仕方ないです
これが「格差」というものでしょうから・・・
2007/3/25
ニクタイチェンジャー
それは大発明だった
肉体から精神(魂と言いたければどうぞ)を
別の肉体に移せる技術
もちろん美しい体がほしいとか
運動神経の良い体がほしいとか
そういう表面的な欲求は、犯罪にも繋がるので
厳しく規制された
基本は生きたいけど肉体が病気や怪我でダメになっている人が
別の肉体を希望できる権利・・・
問題はその健康な肉体がどこから提供されるべきか、だった
1番に考えられ、実用されたのは死刑囚などの犯罪者で
過去も死刑執行後の臓器提供などで問題になっている国もあったし
肉体の交換も問題となってはいるけれど
「どうせ死刑にされるのだから」という
妙な屁理屈は多くの人々を納得させていた
だが・・・それでも救うべき人々は多く肉体は足りない
そこで目をつけられたのは死にたい人々だった
批判が多く寄せられたが、恐る恐るプロジェクトは発進・・・
WEBで、TVで、新聞で、募集をかけた
意外にも応募はほとんど無かった
死にたくなくなった、というわけでは無さそうで
自分の肉体は死んでも、自分のもの?という自我のためか
美しく消失したいと言う事なのか・・・?
そこで密かに肉体Gメンが結成された
彼らが死にたい人を探しだす
そうして世間に知られず肉体の転化は行われていった
そんな中ひとりの死にたい女性がいた
彼女はGメンに察知され病気で余命わずかの女性と交換された
健康体を取り戻した女性は嬉々として社会復帰していった
一方の女性は・・・
抜けていく体の力、死が近づいてくるのを日々感じる
これが自分が望んでいた死なのか
自分の力でもはや死ぬ事もできない肉体の
緩慢な死に、忘れていた感情が沸く
このまま死にたくない・・・
それは、生きる希望ではないが
悔しさが生きる目的になっていた
彼女は余命宣告された日々を過ぎ数年を生き抜いた
それでも肉体が終わるときは来た
こうして何人も命を救われ(奪われ?)ていった
良い事とは決して思わない、が必要悪は「必要」なものだ
要らない人から必要な人へ、当たり前のGIVE&TAKE
世界は正義、正論を捨て去った
でも誰がそれを責めるだろう?
肉体Gメンは高給にもかかわらず離職率は高いという
生きたい人と死にたい人の橋渡しをしているのに
良心の呵責に苛まれるという・・・
でも、神サマが何もしてくれないのだから
ヒトは色々なことをしなくては生きられない
魂を売り渡しても、肉体を売り渡しても・・・(終)
**********************
昨日お見舞いに行ってきました
会社で毎日一緒に仕事していた方が
倒れて半身麻痺になってしまったのです
幸い言葉に支障は無いけれど
右手足は完全に動きません
その方はもうすぐ定年で退職しその後も
バイトを探そうとか、他にもやりたいこともあったし
何より家族のため、がんばって仕事に家事に育児にと
何十年もがんばってやっと楽できる・・・はずだったのに。
倒れて入院後は泣きあかしたそうです
皆がお見舞いに来るととてもうれしい、でも
帰ると一緒に帰りたい、と辛いそうです
泣いてばかりはいられない
リハビリをがんばって絶対に動けるようになるよと
笑ってくれました
本来明るい職場のムードメーカーの人でしたから
その笑顔で安心しました
辛い中笑顔を見せる事ってすごく大変だと思います
そんな彼女はすごい人だと思いましたし
絶対元気に、動けるようになってほしいと願っています
そんな中TVで自殺をやっていましたが
とても・・・とても腹が立ちました
健康な体があるならば彼女に下さい!
要らないならその生命を病気や怪我と闘う人に下さい!
指1本動かす事もままならない・・・
それでも懸命にがんばる事
そのファイトを私は実らせてあげたいです
そんな気持ちからこのショートを書きました
以前も命の交換のテーマを書きました
やはり、重いテーマでも、書かずにいられませんでした
2007/3/21
ココロ殴られ屋
職を失ってから半年たった
俺は今「殴られ屋」という仕事を始めた
ただし、俺が殴られるのは顔や体じゃない
心だ・・・
一昔前に「殴られ屋」というのが話題になったのを
覚えている人もいるだろう
元ボクサー?などの肉体に自身がある人が
ストレスを抱えるサラリーマンなどに
はけ口として、自分を殴らせる、という珍商売
俺は、肉体は全く自信が無い
少しでも殴られたら折れそうな貧相な体
とてもじゃないが、殴られるなんて耐えられない
だが・・・精神はきっとイケル
TVでケンカや恐喝などにあけくれる若者の
番組をやっていた
対立グループと一触即発だそうで
過去にもけが人やヨソでは死者も出たりと物騒だ
だが、その時若者は言った
「俺命がけは怖くないっス。根性は誰にも負けないっス」
ああ、そうだろうさ
俺には絶対できないさ
ケンカするくらいならみんなの前で土下座でも
裸踊りでも平気でできるさ
だが・・・
例えば理不尽な上司から、上司のミスを自分のミスにされたり
客から無理難題を言われた挙句取引をしてもらえなかったり
女子社員からダメ男呼ばわりされたり
そんな言葉や態度の数々に
みんな耐えられるのか?
イマドキの若者は根性はあっても「忍耐」は無いってこと。
俺は、耐えたのさ
耐えられるのさ
だが半年前突然思った
いつものように上司のネチネチとしたイヤミを聞きながら
ああ、この悪口のシャワーで金が貰えたらいいのに、とね
そして思い出したのが「殴られ屋」だった
やってみようか?
そうしてスタートした「悪口言われ屋」だ
始めは客などひとりも来ないし
胡散臭いとしか見られていなかった、が
ある日(酔っ払いだったが)一人目の客が来て
俺を罵りはじめるとあっという間に
人だかりになった
客は意外にもサラリーマンと言う人種だけでなく
恋人に振られた女性や、姑にいじめられていると言う嫁
恐妻家の男、どうしようもない生徒や保護者に手を焼く教師
親がうるさい高校生、見合い30回で断わられ続けている男
などなど、人生劇場・・・めいている
不思議な展開になってきたのはしばらくしてからの事
俺に向って悪口を言って、言い終わった後
金を払いながら「ありがとう」「ごめんね」などと
言う客が増えてきた事だ
客が増え、客から感謝をされるようになって
俺にもちょっとした変化があった(と思う)
今まで、人を見て、くだらねえヤツだとか
バカなヤツだとか、内心バカにしていたのだが
今は、しかめっ面をしているヤツなどは
何かあったのか、かわいそうになぁ
などと同情してしまう
以前怒られまくったイヤミな上司の事さえ
本当は悪いやつじゃなかったろうと思うようになった
俺は、そんな「善人になった自分」に酔っていた
こころ殴られ屋は自分のライフワークだ
ちょっとしたセラピストかカウンセラーになった気分だった
そしてその客は突然やってきた
金を払っても何も言わないただ、俺の顔をチラチラと見るだけ
何日もそいつは通ってきた
そして数日たった
そいつは、口を開いた
出てきた言葉の数々は・・・
誰かの悪口ではなく
自分の今が、しあわせだという言葉だった
俺はうんうん、うらやましいですねと聞いていた
楽な仕事だと思った・・・が
数分経つと段々イライラしてきた。なぜだ?
男は延々と自分の仕事が成功した話
美人で完璧な妻と素直でかわいい子どもたちの話
高尚な趣味を持ち、優雅に暮らす自分の話、などをしていた
そして・・・俺は爆発した
「いいかげんにしやがれ!」めいっぱい男を殴った
男はよろめいて倒れた
倒れた拍子に頭を打った
血に染まる道路
周囲の人々の叫ぶ声
サイレン・・・・・
それからの事はよく覚えていない
男は運悪く亡くなった
俺は殺人犯になった
取調べで殴ったわけを聞かれたが
自分でもわかりませんと言うしかなかった(本当だ)
人々の怒りや恨みつらみの言葉には平気だったのに
幸せそうな言葉になぜ、反応したのか・・・
すると担当官が言った
「被害者はなぁ、会社をリストラされて無職
妻とも離婚され、子どもたちも寄り付かない
気の毒な状況だったんだぞ」
ああ、そうなのか
彼は夢を口にしたのだ
人はストレス、いや傷が浅いなら
まだ怒りや涙で癒される
でも深い傷を負ったとき、癒す方法なんて無い
その時出来る事は、現実から逃げる事
彼は頭の中に理想の自分、理想の家族を持っていた
それを誰かに聞いて欲しかったのだ
そして、俺は自分が強い人間だと思っていたが
本当は他人の不幸を支えとしていた弱い人間だと
事件を起こしてやっとわかった
本当に強いのは他人のしあわせを願える人間だ
人は強くない(強い人などいない)
あきらめや、妥協、腹芸・・・大人の汚い知恵は
生きていくための技術だったのだ
大人たちに幸あれ・・・
(終)
********************
実はこのネタ元はオバサンたちとの会話でして。
会社でのうわさ話に花を咲かせていると
「でも人を褒めると続かないよねー
悪口ならずーっと盛り上がるけど」と一人が言い
なるほどと、皆頷きました
で、そういえば昔殴られ屋ってあったよね
今もあるのかな?と言い出した人がいて
私の中で繋がったという感じです
お粗末さまでしたー 笑
2007/2/7
独身惑星
その惑星はとても高い文明を持っている
知性と理性は宇宙一といっても過言ではない
それを支えているのは犯罪率の低さと知的探究心だ
彼らの文化に学ぶため地球から
(言わば留学)に向った私である
彼らについて調べて、地球のあなた方に送信したいと思う
*****
彼らの身体的特徴について。
彼らは性別と言うものは無い
両性具有とも少し違う
なぜなら彼らは単体で子孫を残せる生物である
自己のクローンと言うよりも
原始細胞の分裂、増殖といったところだろうか
むろん実際は子孫を残す時期は
地球人の出産同様に、医療施設で大切にケアされ
出産(と呼んでもいいだろう)される
生まれた子どもは親と同一の遺伝子を持つのだが
後の教育により親との個性の分化をされてゆく
姿かたちは似ていても、人格は遺伝ではなく
育つものだ、という彼らのすばらしい考え方!
犯罪率が低いのは、地球で言うところの
性犯罪や思春期の精神不安による暴力性などの
性ゆえのリスクが無いからだ
思えば地球では男女関係のもつれの犯罪が
何と多い事か・・・
ストーカー殺人や痴漢などはもちろん
犯罪ではなくても、日常の生活の中でも
恋愛で仕事が手につかなくなったり
浮気で恋人同士がもめたり
恋愛とはリスクばかりでいい事はなにも無い気がする
恋愛が無くなるだけで、精神的にも社会的にも
どんなにかいいだろう!
私はこの惑星こそ自分に合っていると思う
思えば地球では居心地は悪かった
ひとりで、生きていく事を暗にみな非難する
だがここでは、みなパートナーはいない
自分を大事に生きていく
自分を大事にするから、他人にもやさしく出来る
すばらしい・・・すばらしい世界だ
*****
ここまで書いて数日たったが
書かねばならないこの惑星の文化の欠点があった
それは芸術について、だ
私は素人なのでうまくは言えないが
絵画にしても音楽にしても舞台などあらゆる事に
迫力が欠けている・・・気がする
喜怒哀楽が薄いような・・・気がする
やさしい、穏やかさ、癒し
地球に少ないものが満ち溢れている代わりに
狂気、慟哭、悲哀など人の魂をなぶるものが、ない
けれど私はここに定住しようと思う
私は灼熱の夏と厳寒の冬を持つ地球には住めない
ただ春の暖かさの中で日々を過ごしたい
ここでは恋人はできないが、多くの友人に恵まれる
これからも時折便りを送るから
あなたも返事を下さい
そして、地球の喧騒に疲れたら
遊びに来てください、この桃源郷惑星に
(終)
**************************
職場でたまに色恋沙汰があります。
先日もおしどり夫婦と言われていた方が
ご主人の浮気(会社の若い子と)で離婚
なぜあんな事をしたのかと本人も憔悴している様子
死にたいくらいだといっていたらしいです
人は恋愛で人生狂いますよね
大きな転落をわかっていても止められない
恋愛が無ければ、と思ったのがこの話でした
2007/2/12
オトナの惑星
はじめまして。地球の方々。
短い日々ですが地球の事を色々学びたいと思います
よろしくお願いします
私は正直驚きました
この地球では、幼体(子ども、と呼ばれていますね)がいる!と。
私の星では幼体は人工子宮で育てられ
肉体が成長完了すると、次に教育ブースに移行されます
そこで知識や道徳、感性等、社会人として必要な全てを学びます
初めて外に出る、それは完成された大人と言う事です
原始時代、幼体は大人が生み育てていました
動物がそうであるように、様々な年齢層のいる社会です
それは、ヒト族の文明を停滞させてきました
幼体の成長過程のリビドーや、大人の迷い、悩み
しなくてもいい苦労をし、エネルギーを使う
そのリスクに気がつき、幼体の完全教育を始めて
私たちの文明は飛躍的に発展しました
地球の今の悩みの多くは「コドモ」のことではありませんか?
コドモの起こす事件に大人は右往左往し
コドモの言動のひとつひとつに、一喜一憂する
地球のローカルの国のセイジンシキと呼ばれる大人の儀式を
映像で見ましたが、成人となった祝いなのに
なぜあのような粗暴な振る舞いをするのですか?
あれは、肉体は成人しているけれど
精神面は幼体(コドモ)であるからなのです
ブースで成人まで教育すれば、ああはなりません
地球はすばらしい惑星です
けれど、一歩前に進むために、幼体と成人との分離を提案します
*****
何日か地球で過ごさせてもらい、楽しかったです
でも一番心に残ったのは
無心に遊ぶ(この行為もまたムダ)コドモの
・・・笑顔でした・・・
幼体との暮らし・・・その笑顔で地球の人の幼体への
思いの強さを知った気がします
でも、共生は私たちにはムリでしょう
例えば、ペットがその愛くるしい姿で
癒しを与えてくれるとしても
決して分かり合えず、生物として(ランクが)違うのと同じ。
*****
水の星、野蛮の星、原始の星、形容詞がたくさんある地球を
後にして、私は考える
幼体と成人
いわば異文化の衝突なのだけれど
古来からその衝突で
文明は滅びたり、新たに誕生したりしてきた
地球は、どうなんだろう?
私が次に地球を訪れるとき
果たして、幼体に振り回され、荒廃しているか
それとも稀有な文化を花開かせているのか・・・
少し、夢見てみようか・・・
(終)
***************************
毎年TVをにぎわす成人式ですが、地方自治体が
財政難のところが多いのに、無理して
開催してくれていると思います、が
一部の新成人「荒れる」のはとても残念
イマドキの若者って、大人っぽいのか
コドモっぽいのか・・・でも
私たちの時代も言われたけどね
「最近の若い者はだめだ」って・・・
2007/2/14
デスメモ帳
(もちろん、デスノートのパクリです)
高校生のミヤコはある日道に落ちているメモ帳を拾った
イマドキこんなもの使わない・・・ケータイがあればOK
でも何となく高級そうな革の素材だから、拾ってしまった
家で中を見ると使っていないらしい
だが、表紙の裏に何か書いてある
このメモ帳に書かれた事件の真犯人は事件の
全貌を暴かれて死ぬ
?????なにっこれ?
ただの悪戯なのかと放っておく事にした
夕食を食べているとTVで何年間も未解決の事件の
特集をやっていた。許されない凶悪な事件の数々
悲しみと怒りの癒えない家族たち
煮物を口に入れつつ、母親が怒り口調で言った
「超能力って本当にあったらいいのにねえ
真犯人がどこにいても、すぐ誰かわかって捕まえるのにねえ」
父親が面白そうに頷き言う
「呪いっていうか、わら人形とかあるじゃないか
ああいうのも、本当に効果があるんだったら
犯人死ね、とか念じてみるとか」
ミヤコはさっき拾ったメモを思い出した
部屋に戻るとおもしろ半分、怒り半分で
TVで見た未解決事件のひとつのタイトルを書き込んだ
連続強盗殺人事件で3人死傷、目撃者もいない時効間際の難事件
書いた後ミヤコは笑った
何バカやってんだろ私。こんな悪戯で本当に事件が解決するなら
警察要らないジャン・・・
ま、いいか・・・ミヤコは眠りについた
数日後TVは大騒ぎだった
ある男が変死したのだが、身元調査で過去の殺人事件の犯人の指紋や
DNAと一致。男のアパートを調べると
事件で使用したのと同じ拳銃が出てきたのだった
被疑者死亡ではあるが、この男の犯行は間違いなさそうだ
ミヤコは少し驚いたが、自分のメモと関係しているとは思わなかった
でも、冗談半分でまたメモに事件をひとつ書き込んだ
少女の惨殺事件、ミヤコが最も許せない事件のひとつだ
これも偶然で良いから、解決してくれないかなと、ちょっと思いつつ
数日後、平凡な会社員の男が自殺。
ところが遺書には少女殺害が書いてあり彼女の元へ逝きたいとあった
TVはセンセーショナルに取り上げた
ミヤコは自分の心臓が激しく打つのを止められなかった
もしかして、もしかして・・・・・メモの効力は本当なの?
ミヤコはそれから、色々な事件をメモに書いていった
どれも凶悪なのに、まったく犯人のわからない事件ばかり
難事件の解決が相次ぐ事にメディアも、注目し始めたが
ミヤコは、かまわなかった。だってイイコトしているんだもん
ある日ひとつの事件を知った
連続婦女暴行殺人事件、数人の女性が暴行され
中の2人は殺害された事件。でも犯人が捕まらぬまま時効を迎えた
遺族の無念が伝わる気がする・・・
時効になった事件も有効なのかしら?
ミヤコはメモをパラパラと見た
すると、気がつかなかったのか?新しい項目が増えていた
事件は時効を迎えてもメモ帳は有効に作用する
ミヤコは迷わずメモに事件を書いた
その夜ミヤコは夢を見た
どこかで見たような青年が若い女性を追いかけている
必死に逃げる女性を、追いかける青年
やがて青年は女性の首に手をかけ・・・・・・・
目覚めのわるい朝だった
ミヤコはその夢がずっと心に残った
数日後学校に連絡が入った
「お父さんが病院に運ばれたからすぐ帰りなさい」
ミヤコは驚いた。病気ひとつしない健康な父
でも40代だし無理をしていたのかしら・・・
心配しつつも自分を励ます「きっとパパは」大丈夫
でも病院で父はミヤコを待ってはくれなかった
泣き崩れる母、病院の白い壁、通路のライン・・・頭が真っ白だった
その時警察らしき人物が来た。なぜだろう・・・
母に何か言っている
母が倒れる
ミヤコは・・・・・・めまいを感じ、意識を失った
あれから数日母とミヤコは家を離れ遠くのアパートにいた
父親の死は連続殺人犯の死でもあった
夢で見た青年の顔
あれは若かりし頃の父親の顔だったのか
なぜそんな事をしていたのか
今はもうわからないし、わかりたくはない
ただ自分はそんな父の子である事と
その犯罪を隠し平凡に人生を過ごした父が
今になって罪を暴かれたのが自分のメモのせいである事
それだけは、確かだ
凶悪犯の青年の顔と
やさしく楽しかった父の笑顔
それが交互に出ては消える
ミヤコは思う
これからどう生きようか?
これからもこのメモを使うのか?
*****人は現在しか生きられない
でも過去は影のようについて来る
未来は、そんな自分の出す足の先に広がる
ミヤコは立ち上がると母親に言った
「まず編入できる高校を探したいけどいい?」
窓を開けると外の空気は前と同じに流れくるのだった (終)
*******************************
これは話題の漫画「デスノート」のパロディなんですが
あれって、氏名と生年月日が必須です
でもTVを見ていて思うのは未解決事件こそ解決したいなって事です
そこで、こんな話を思いつきました
でも自分の親が実は犯人だった、というのは
意外な人が犯人かもしれない、という可能性を
親という身近でインパクトの強い人に例えてみた次第です
先日何かの雑誌にデスノートのことがあって
結局犯罪者であっても殺す事はテロだ、と書いてありました
犯罪者イコール悪、と断定して自分の価値観で裁く、というのが
その理由だろうと思うのですが
そうなんだろうけど、万人が納得する危険思想ってあります
凶悪犯を殺す事には多くの人が納得するだろうけど
許す事はどうだろう・・・
でもそんな価値観の違いが
今の世界的な衝突を生んでるかもしれないけですね
ただ単純には、凶悪事件は全て解決して欲しいと思っているのですが。
2006/10/1
★ しあわせ ★
今日も息子は、何も考えずに洗濯物を増やしてくれる。
仕事から疲れて帰ってくるのに何にも手伝ってもくれない。
親だって歳をとっているんだぞ。
でも学校でこうだった、こんな事があった、と
楽しそうに話す横顔をみると、
私の小言も引っ込んで、思わず笑いがこぼれる。
あ、またこんなプリントを今頃出す!半年も前のじゃないの!
また息子は笑ってごまかした・・・
「あれは何をしているの?」病室を訪ねた私は医師に聞いた
「たぶん、また息子さんと何かしているのでしょう」
「治らないのですか?」
「病巣があるわけではありません。
自分の意思で現実を受け入れないので、今はどうしようも・・・」
そっと部屋を出ようとした私に気がつくと彼女は言った
「またね、そうそう!今度運動会があるから来ない?」
彼女の目には亡き息子が目の前に、確かに、いるのだ・・・
治らずにいた方がいいのか・・・
彼女のしあわせな時間はそこで、彼女の中で、止まっている
*********************************************
もしも自分の人格が崩壊するならばただひとつ、
家族の、息子の、記憶だけ残して欲しいと思いました。
ボケてしまったおばあちゃんを思い出すと、
辛いのは自分の娘の記憶まで失ったから。
記憶は大事な自分の一部?いや核です。
でも時にはその記憶で辛い思いもする。
嫌な事、悲しい事は忘れないと言います。
だからこの話は逆に大事な家族を失ったとき
「失ったままでは生きるのが辛すぎる」位の強い記憶を持つ時
(誰でもある家族などの大事な記憶)どうしたらいいのか、
の答えのひとつです。
空想の世界に逃げるネガティブな考え方ですが、
人はそんなに強くないから挫けたままの生き方もまた、ありかなと・・・
2006/5/28
罪無き者
彼の残虐な性格を主に作ったふたりの人間、彼の父親、母親
そして、それに対して何のフォローもしなかった周囲の無関心な人間たち
罪があるとしたら、それは彼の人生に愛を与えてこなかった彼らにある
それでも、犯罪を犯した彼は罰を受ける・・・
罪の無い命を奪った償いの代償にはならないとしても、だ
公判中の彼には、素晴らしい人々が付いていた
彼らの熱心な働きで、彼は次第に改心していった
と同時に、自らの罪に苦しみ、日々を苦悩と祈りに費やしていた
月日は流れた
彼の更生は認められ、彼は牢獄生活から解放され社会へ出ていた
彼の願いはただひとつ
被害者の遺族に謝罪に行きたい、と言う事
訪ねて行った被害者の家は荒れ果てていた
大黒柱だった父を失い、過労で病気を患いながら働いていた妻もまた倒れ
残された子どもは、心の傷も癒えず大人になり、やがて犯罪に手を染めた
加害者である男の人生そっくりになっていた
「何しに来たんだ、ブッ殺されてえのか?」
アルコールの匂いの中、うつろな目でつぶやく男に
ひたすら彼は謝っていた
頬を伝う涙は、本当に、この男の手で殺されても仕方がないと思うくらいの
「ほんものの」涙だった
「帰れよ。金でもくれるってえなら別だが」そういうと高い笑い声が響いた
彼は何回も被害者宅を訪れた
ある日の事
それまで、まともに相手をしなかった遺族の男が、口を開いた
「もう、いいよ。許したから。もう、来ないでくれ。
これでいいんだろう?そう言えば、満足なんだろう?
頼むから・・・もう、来ないでくれよ・・・」
男は泣きそうに思えた
「本当に、すみませんでした」
そう言って歩き出すと、確かに心が軽くなった気がした
これで・・・これで、歩いて行けるかもしれない
自分の精一杯の謝罪・・・罪は消えなくても・・・
少しだけ、きれいな自分になったかもしれない
彼はたぶん立ち直ったんだろう
これから、2度と過ちを犯すまい
人は、生まれ変われるのかもしれない
もうひとりの、傷ついた人間は・・・どうなるのだろう
遺族の男は、相変わらず、酒をあおり、夜の街で人と諍い
人生は汚濁の川の中だ
心から詫びている者を目の前にして
男は憎しみ通せなかった
もう誰を憎んで良いのか
親を殺した憎い男
自分の人生をメチャクチャにした男
その男を憎み続ける事で、何とか今まで生きられた
もう憎むべき男がいない
男に残ったのは、悲しみだけだ
彼はどう生きていくのか
心の穴を埋める術は?
どんな方法も無いんだろう
死ぬまで、抱え続ける心の傷、塞がらない穴・・・
誰も助けてはくれない
男は自嘲気味の笑顔を浮かべた
すると、腹に鈍い痛みが走った
ふと見ると、血が流れ出している
さっきのケンカのお返しか・・・
見ると走って逃げてゆく者が見えた
膝を落とすと、男は地面に倒れこんだ
映画のような女の悲鳴が聞こえたが
後は何だかスローモーションのように目に映った光景はおだやかだ
もう、いい
俺にしてはラッキーな終わり方だ
だって、俺の生まれた意味さえ、無かったんだから・・・
(終)
*********************
色々な事件で、犯人の謝罪の気持ちが重要視されますが
謝罪されて、被害者は救われるのかなあと、ふと思いました
反省とか謝罪とか、裁判などでも、重要なポイントとなります
でも・・・本当はそれは、違うのかもしれません
それは加害者の事情でしょう
被害者は・・・被害の事実は消せません
犯人は、本当に改心して、謝罪して、受け入れられれば
安堵というか、人生を一歩すすめるように思いますが
被害者は・・・特に被害者が亡くなって残された遺族は
決して戻ってこない家族を、一生思って生きていく、そんな辛さが
軽くなるわけではありません
極端に言うと、加害者を殺しても、亡くなった被害者は帰りません
謝ればいい・・・それは違う
でも、真摯に謝る人と、反省の全くない人と同じのも変です
うーん。むずかしい(結局この言葉が出る 苦笑)
2004/10/16
再犯ゼロのプログラム
増え続ける犯罪者にどこの刑務所もいっぱいだ
今や世界中、共通の悩み
経済への圧迫。刑務所の運営には思う以上にカネがかかる
下降する景気も拍車をかける
刑務所の財政は赤字
それでも、刑期を終えて立ち直ってくれる者は、いい
でも,現実は再犯するものも多く
再犯率は年々高くなっている
社会に適応できず,脱落する
一口に言うのは簡単だが、人の数だけ存在する
身よりもなく,仕事もないある者は
家・・・として刑務所に入りたがり、犯罪を繰り返しては「帰って来た」
またある者は粗暴な性格のコントロールを
社会では、どうしてもできなくて・・・
そして、最悪なのが犯罪そのものを楽しむ者
それは快楽としてというよりも、人生そのものであり
犯罪が「生きがい」という社会にとってまさに天敵
犯罪者を社会に適応させようと、どこの施設も必死になっていた
いくつかの刑務所では更生プログラムが成果をあげた
が・・・初犯や軽犯罪が多かった
凶悪犯罪は、なかなかムズカシイ
更生はいわば人の心を変える「洗脳」ともいえる
いや・・・ちがう
悪に快楽を見出した心は、すでに洗脳されている
それを解除する・・・さらに難しい作業だ
うまくいかなくて当たり前
成功したら儲けモノというバクチ並みの確率
そんな中ある凶悪犯罪者専用の刑務所で
再犯率が下がっていると言うニュースが入った
あるプログラムを導入した後、出所した者の再犯率はゼロ
つまり、まだひとりも「帰ってこない」という
どんな方法なのか,格施設ではこぞってそれをとり入れた
みるみる各地で成果は上がり、やがて国境を超え
世界中の受刑者にプログラムを取り入れた
世界中で,犯罪の再犯率が減ってきた・・・
刑務所に入ると言う意味は
ひとつは罪の償い
もうひとつは,本人の更生であるが,再犯防止する事により
更生を100パーセント達成できるのだ
ひとつ、謎だったのはこのプログラムがどんなものか
誰も知らないという事だった
関係者に聞いても、よくわからない,今までとかわっていないと答える
彼らが秘密を守り、ウソをついている可能性もあるが
どうやら,本当にわからないらしい
むろん上層部の人間は「知っている」だろうが
***
どうして山に登るか・・・そこに山があるからさ
と高名な登山家が言ったとか?
そんな事は俺は知ったことじゃないが
どうして「知りたいか」って
それはそこに秘密があるからさ!
俺は子どもの頃から、知りたがり屋だった
昆虫がなぜ人間と同じように生きているというのか
時計はなぜ正確に時を刻むのか(誰が正確だというのか?)
カメラはなぜ光景を写すのか
なぜお袋はオヤジの留守に化粧を濃くして出かけるのか(苦笑)
そんな好奇心は取り柄になった(無理やりだったかも)
俺はジャーナリストの末端にしがみついた
もっとも、スキャンダルやガセネタ満載の三流以下ではあるが
人の秘密を暴くのは楽しい
そんな俺が目をつけたのは神のプログラムと言われている
再犯ゼロ・・・だった
どうして、職員さえわからないうちに犯罪者を改心させる事が可能なのか
しかも、それは高い塀の向こう側の話だ
俺の好奇心は全開になった
俺はまずひとつの施設を選んだ
そこは凶悪犯専門だった
死刑にならないが、スレスレの(なってもおかしくないが
裁判で死刑を免れたというわけ)凶悪犯ばかり
俺は十年以上という刑期を終えて出所した者のその後を追ってみた
プログラムがスタートしてのこの数年で
出所した数33人
職業は・・・様々だ
長い刑期で年齢が高いためか、高度な技術や知識(学歴,残酷だ)を
必要とする職種は就けないし、肉体労働のキツイものも続かない
職を点々とする者、辞めてそれきりの者,ホームレスになっている者・・・
生活保護を受けているときはともかく
収入が止まると栄養低下のせいか病気になる者も多いようだ
アパートで衰弱死・・・
路上で餓死・・・
道路でごみをあさっていた折バイクにはねられ即死・・・
?!
俺はひとりひとりの文章を読み返した
33人の「更生者」は現在全員が亡くなっていた!
だが事故はほんの一握りだった
(俺は大胆にも、国が密かに暗殺していたのかと考えた 笑
だから事故が多ければ怪しいと)
でも・・・病死にしても、餓死にしても、死んでいる事は事実だ
どうしても、知りたい
再犯ゼロ・・・全員死亡しているから再犯ゼロなのは当たり前だ
ワケを・・・ワケを・・・どうしても,知りたい
***
どんな場所でも住めば都?
とはいえ、刑務所とはあまり居心地は良くはない
俺は刑務所に潜入した
刑務所に入る方法として・・・できるのは
そう、犯罪を犯す事だった
不本意だけど,仕方がない
殺人や傷害で人を傷つける気はなかったので
今までの職業を生かして(苦笑)詐欺と恐喝にした
なんせ、ネタには困らないからね
なるべく凶悪な所へ入るように
犯行は数回やった・・・
そうして逮捕
それにしても「入る」のもなかなか大変だ
犯罪以外で日銭を稼ぐほうが気楽だ(笑)
毎日は単調に過ぎていく
慣れれば、自分がいた世界のほうこそ不健康だと思える
三食,仕事、運動,少々の娯楽(TV鑑賞など)
そうして月日が流れた
いよいよ出所
でも,結局変わった事は何も起きなかった
定期的な心理テストなども昔からあるようなカビの生えたものだ
出所前になって社会生活に慣れる為の生活プログラムになった
俺は徐々に前の生活のカンを取り戻していった
そして・・・今こうして原稿にまとめている
何一つ得られなかった体験
さて、どうしよう
そう言えば、中で親しくなった数人がいた
彼らの何人かは先に出ている
連絡先は・・・うん・・・わかるぞ
わからない者もいるが、職業柄調べるのはたやすい
そうして俺は連絡を取っていった・・・
が・・・俺よりも二ヶ月以上先に出たやつらは,みんな・・・亡くなっていた
ひとりだけ電話が通じた
そいつは、俺と二週間くらいしか違わない
どうしているか、たずねた
元気だが、紹介された仕事先でケンカしてやめちまった・・・といった
あいかわらずの、ダミ声に何となく安心した
それにしても,他のやつらは・・・なぜ
真相がわからないまま数日経った
仕事再開の準備をしていると電話が鳴った
それは・・・見知らぬ女からだった
その女は先日電話した、刑務所仲間の男のオンナだという
「あの人,死んだんです」
俺は言葉が出なかった
と同時に冷や汗が噴出してきた
そいつと俺の出所の「時差」は二週間
俺は二週間たったら、どうなるのか
オンナは泣いてはいなかった
ただ金の無心をしていった
「あの人がアンタのところ行けば金になるって」
彼女が出したのは一枚の紙だった
それは一般には知られていないが
実は有名な軍事に関するあらゆる研究をしている施設
その名前と所在地のひとつ(いくつかあるので)が書いてあった
動悸を押さえ女に財布にありったけの金を持たせた
嬉々として女は去っていった
急がねば・・・自分の命は惜しいし真相も知りたい
まさか刑務所のように忍びこめる場ではない
はて・・・どこから?
可能性のある忍び込める場所・・・!
デスクの上のパソコンが目に入った
***
さて。あれから1年
俺は生きている
誰も喜ぶ人もいないが、とりあえず自分を祝おう
今俺は囚われの身といっていい
考えようによっては刑務所より過酷だし
人から見れば大出世コースに乗ったと見るかもしれない
一番近いのは野蛮な独裁政権国家に拉致されたけど
国賓待遇っていう表現か(苦笑)
俺は1年前この研究施設に「忍び込んだ」
もちろん身体じゃない
アタマだけ
しかしやつらはキカイにも精通している(当たり前だ)
俺のキカイが侵入を試みた数時間後
部屋のドアはノックされ
ドアを空けた俺はそのまま連れてこられてしまった
そう。ミイラ取りがミイラになっしまった
そのまま殺される事もありえたのだが
俺の経歴(ヤバイ、ジャーナリストが売りになった 笑)と
侵入の為に犯罪まで犯して刑務所入りしたことを買われて
スカウトってわけだ
俺はイイ線まで調べていたのだ
再犯ゼロとは再犯する前に犯罪者を殺害する事
しかしカラクリは複雑で個人によって方法も異なる
その為には軍事の暗殺の知識が一番というわけである
役人は言った
「戦争や犯罪で罪のない人を大勢殺す事を悲惨だと思わないか」
「我々は善良な人間を殺害するわけではない」
「逆に人々を守る為に,手を汚しているのだ」
俺は同意し(同意するしかないだろう?この状況では)
仕事をするはめになった
ただし・・・監視下に置かれている
不自由はないさ
広大な施設は何でもある
要望があれば女も不自由なくもらえる
高級優遇・・・か?
仕事は今までのように、秘密を暴く・・・
ただし指定された相手が多いのが玉にキズ
まあ、社会のクズが死んでいっても誰も損はしないさ
俺も良心の強い人間でもないし
気楽にこの仕事をやっていく、それしかないけど・・・
***
ただ、秘密を知りたいという俺の子どもの頃からの趣味は
職業としての「知った秘密を世間に公開したい」という欲求になっていて
いつかこれもバラしてやりたいと思っている
ただ・・・命がけだから,勇気は今のところ、ない
***
研究施設で職員が転落死した
彼は数年ここで働いていた
前科もあったが更生して
見事にエリート研究員となっていた
惜しい命を亡くした・・・
施設の広報誌での小さな記事に
輝くバッジをつけた数人が安堵した
「やはりいつかは反逆を企んでいたんですな」
「やはりハイエナはネコにはならん」
「始末して良かった」
亡くなった男は用心を重ねて
日記をパソコンではなく手書きで書きつけていたが
行動のみならず部屋の隅々まで日夜監視されていたので
彼の小さな野望(願望)の書き付けが見つかり
危険を判断され始末された
ここで彼の失敗談は終わるが
好奇心を持った人間はひとりではない
秘密はいつか暴露されるもの・・・というが
いつか誰かがまた暴きにくる
そうして何人目かが必ず成功する
そうして人の目に触れた時
初めてそれが判断されるのだ
正しいのか悪なのか・・・と
***
巨大BBSサイトに載った匿名の記事
突飛だが本当だったらエライことだと思いつつ読む
アクセス数が多いから
興味を持った人も多いらしい
再犯ゼロに隠された真実
小説なのか、ウソのスキャンダルなのか、まさか真実なのか
いずれにしても、今人気の記事だ
うんトモダチにも教えてやろーっと ♪
(終)
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いやー、長かった。すみません
TVを見ていると凶悪犯罪が多すぎて,イヤになっています
残酷なニュースが多すぎる
母子4人殺害や幼児の兄弟殺害,保険金目当ての夫殺人などなど
人の命が軽すぎる
でも、逮捕されてさらに極刑になるのは一部
被害者は生死を選べないのに
どこでも刑務所は定員いっぱいかオーバーと聞きます
凶悪犯はどんどん死刑にすればいいと
と先日児童殺傷事件の宅間死刑囚の死刑執行のニュースを見て
会社の人がつぶやきました
うん。必要な人の命を奪って
「要らない」人が生き残るのは納得できません
でも、そうした人が生きている事の意味って何でしょうか
要らない人は本当にいるのか
要らない人・・・本当はそうではなかったかもしれません
でも、彼らは罪を犯した
わたしは彼らの中に意味を見出せません
見出したくない・・・
また、罪のない人々が殺されている事実
中には生まれてまだ数年の幼い命もあります
彼らは,何の為に生まれたのか
それを問うと,辛くなります
でも、彼らの生きた意味は必ずある
悲しいけれど,大事な意味が・・・そう思っています
2004/9/10