宇宙人が来た日
テレビで「今夜ついに目撃!UFOをあなたは目撃する」
という番組をやっていた
食卓を囲んで画面をぼんやり見ていた私は
「別の番組にしようよ」といったが子どもは
「イヤ。これを楽しみにしていたんだもん」と譲らない
仕方なく家族3人画面を見ていた
しばらくして息子の顔色が変わった
「どうしたの?」と聞くと画面を指差し
「見て!」
そこには見た事もない文字の羅列だった
宇宙人からのメッセージが解読されたとテロップが。
バカバカしい。視聴率の為なら何でもやるさ
しかし・・・画面を見ている私も変な気分になってきた
まるで心の中に誰かが直接話しかけてくるように。
「おい、何か変な感じしないか?」口を開いたのは夫だった
子どもはもう画面に集中して,返事もしない
心に不安が広がる
3人とも凍りついたように動けない
そして・・・心の声は言った
「時は来れリ。窓を開けて空を見よ」
3人で慌てて窓に駆け寄リカーテンを開く
夜空が広がっているはずのそこには・・・
映画「未知との遭遇」に出てくるような
まばゆい大船団が降りてくるのが見えた
3人はへなへなと崩れ落ちた
地球最期の日かもしれない
家族といられた事を幸いに思おう・・・
「こんばんはー!返事がないから勝手にあがったよ」
隣のオバさんが何かの包みを持って立っていた
「田舎からお菓子送ってきたからサー,食べな」
この地球最大の時にこの人は何を言ってるんだ!
「それどころじゃないでしょう!」
「ってなにが?親戚でも倒れたとか?」
「宇宙人ですよ!わかるでしょう!」
「はあ?」
怒った私は窓を指差し叫んだ
「あれを見て怖くないんですか?」
オバさんは不思議そうに言った
「また雪にでも?」
切れそうな私が窓を見ると,そこにはいつもの夜空
狐につままれたように私たちは突っ立っていた
翌日の新聞にはトップでこうあった
「お騒がせ宇宙人 正体は催眠術」
なーんだ。そうだったのか。
あの文字で私たちはあっさり暗示にかかってしまった
真相がわかるといつもの朝の安心感が広がった
それからもたまにあのての番組が流れるが
もうだまされない。人は学習能力がある
その日もまたテレビで宇宙人の番組をやっていた
外を見ろと言っている
また見える幻覚に脳の神秘さえ感じた
さあ寝ようか・・・あしたも早い
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地球への侵略は簡単だった
戦わずして惑星をひとつ手に入れた。
テレビという媒体を利用して
「ホントに来るぞ」という、でも来ない
それを繰り返すうちに人は警戒心が無くなるものらしい
宇宙人は一冊の絵本に感謝した
地球に来た際収集した資料にあったものだ
タイトルは「おおかみしょうねん」
2001/3/7
あとがき
ともやさんのHPに「はだかの王様」という
コラムがありまして集団催眠についての
与太話しを考え付いたのです
数年前のポケモンというアニメで子どもが
倒れたり、テレビというメディアは催眠しやすい
モノだと思いました。サブリミナルなんてのもあるし