しょーと★すとーりー 3

宇宙人が来た日

テレビで「今夜ついに目撃!UFOをあなたは目撃する」
という番組をやっていた

食卓を囲んで画面をぼんやり見ていた私は
「別の番組にしようよ」といったが子どもは
「イヤ。これを楽しみにしていたんだもん」と譲らない
仕方なく家族3人画面を見ていた

しばらくして息子の顔色が変わった
「どうしたの?」と聞くと画面を指差し
「見て!」
そこには見た事もない文字の羅列だった
宇宙人からのメッセージが解読されたとテロップが。

バカバカしい。視聴率の為なら何でもやるさ
しかし・・・画面を見ている私も変な気分になってきた
まるで心の中に誰かが直接話しかけてくるように。

「おい、何か変な感じしないか?」口を開いたのは夫だった
子どもはもう画面に集中して,返事もしない

心に不安が広がる
3人とも凍りついたように動けない
そして・・・心の声は言った

「時は来れリ。窓を開けて空を見よ」

3人で慌てて窓に駆け寄リカーテンを開く
夜空が広がっているはずのそこには・・・
映画「未知との遭遇」に出てくるような
まばゆい大船団が降りてくるのが見えた

3人はへなへなと崩れ落ちた
地球最期の日かもしれない
家族といられた事を幸いに思おう・・・

「こんばんはー!返事がないから勝手にあがったよ」
隣のオバさんが何かの包みを持って立っていた
「田舎からお菓子送ってきたからサー,食べな」
この地球最大の時にこの人は何を言ってるんだ!

「それどころじゃないでしょう!」
「ってなにが?親戚でも倒れたとか?」
「宇宙人ですよ!わかるでしょう!」
「はあ?」

怒った私は窓を指差し叫んだ
「あれを見て怖くないんですか?」
オバさんは不思議そうに言った
「また雪にでも?」

切れそうな私が窓を見ると,そこにはいつもの夜空
狐につままれたように私たちは突っ立っていた

翌日の新聞にはトップでこうあった
「お騒がせ宇宙人 正体は催眠術」

なーんだ。そうだったのか。
あの文字で私たちはあっさり暗示にかかってしまった
真相がわかるといつもの朝の安心感が広がった

それからもたまにあのての番組が流れるが
もうだまされない。人は学習能力がある

その日もまたテレビで宇宙人の番組をやっていた
外を見ろと言っている
また見える幻覚に脳の神秘さえ感じた
さあ寝ようか・・・あしたも早い

******************************

地球への侵略は簡単だった
戦わずして惑星をひとつ手に入れた。


テレビという媒体を利用して
「ホントに来るぞ」という、でも来ない
それを繰り返すうちに人は警戒心が無くなるものらしい
宇宙人は一冊の絵本に感謝した
地球に来た際収集した資料にあったものだ

タイトルは「おおかみしょうねん」

2001/3/7


あとがき

ともやさんのHPに「はだかの王様」という
コラムがありまして集団催眠についての
与太話しを考え付いたのです
数年前のポケモンというアニメで子どもが
倒れたり、テレビというメディアは催眠しやすい
モノだと思いました。サブリミナルなんてのもあるし

ばくだん

予告は世界の色々な都市に来た

「全人類を滅ぼす爆弾を仕掛けた」

なるほどあらゆる所で爆弾は仕掛けられていた
爆弾の配置をよく見ると地球全体をカバーできる配置になっていた
ちょうどボールを持ち運ぶ時に使う網のように規則正しい

どこのテロ組織かわからなかったが
爆発まで時間はない
撤去作業に集中する事にした

しかし・・・なんとがっちり地面に(根が生えたように)付いて
取れないのである。あらゆる機材や方法もダメ

そうしているうちに時間が来た
人々は最期の祈りを捧げはじめた・・・ポンッ!

あれ?世界で一斉にカワイイ音を立てて爆弾は爆発した
これはブラックジョークに違いない
人々は安堵した

科学兵器というわけでもないようだった
なんの異常もない。成分分析も異常なし

***********************************

さて人々が滅びたのはそれから100年以上も経ってからであった
原因は、そう、あの爆弾
あれは生殖細胞に傷をつけるものであったのだが
当時の科学はその成分を検出できなかった
ちょっとダイオキシンなんて言うモノに似ていたので
見落したのかもしれない

子どもが生まれなくては種は滅びる・・・・・

宇宙では残念な会話がされていた
「せっかく好きそうだから撒いてあげたのに」
そうダイオキシンでいっぱいの地球だから
好きでそうしていると思った宇宙人からのプレゼントであったのだ
爆弾ではなく「クラッカー」だったのだ・・・

2001/3/3


子どもは学校で環境問題を教わるようです。時代ですね
ダイオキシンの話もよく知っています
悪いとわかっていながら使いつづける現実に子どもは疑問みたい
環境問題は経済とリンクしますから私は賛否わからないんですが。

裏切らない友達

「はあー」りんはため息をついていた
まったく女の世界は噂と悪口で成り立っている
お茶を飲んでいる3時間の話題は「そこにいない人の噂」だ

自分が仲間外れにされないためには
ぜひとも誰かを悪く言わなければならない
自分を守るテクニックだ

人をほめると3分で終わるがけなすと一晩でも終わらないという

段々そんな自分も女たちもイヤになってきた

ある日埃をかぶっているパソコンに目が止まった
こんな箱でイマドキの若者や主婦が
時として犯罪に走るほどにハマってしまうのはなぜ?
ただそれだけでカバーを取った

いんたーねっと?
掲示板やチャット?
わからないままに読むだけ読んでみると
多くの悩みを立場の違う人に相談したりされたり
友達になっていく過程が読み取れた

噂ばかりのオバさん世界にイヤになった私は即飛びついた

「はじめまして」おそるおそる打つとなんと
たくさんの人からレスが返ってくる
やさしい言葉、新鮮な世界
りんの求めていた「ともだち」がそこにいた

ネットにハマってしばらくたったある日
チャットの隠し扉を見つけた
入れなかった。仲間に聞いても「わからない」という。
その後自分で研究してパスワードを発見

扉を開けて読んだ文は・・・

「まったくウザイよね、りんさんて」
「さん付けする事ないよ,呼び捨てでいいって」
「そうだよね,わからないもんね」
「バッカみたいだよね暗いしさー」
「あれだから友達できないんじゃん」

2度とネットなんてやるもんか・・・一番中泣いた。
今までの「昼の」友達から何を言われてもいい
ネッ友達からは嫌われたくなかった
仲間だと思っていた
裏切らない友達だと信じていた・・・なのに・・・

でもりんは自然にキカイに向かっていた
もうこれ無しではいられないのだ

適当に検索していった
「裏切らない友達」こんなのないか・・・
ところが「あなたの裏切らない友達になります」というのがヒット

うさんくさいとは思いながらも開いてみると
その掲示板はひとりだけだった
「さびしいです。ともだちになってください。
けっしてうらぎらないともだちに」

自然に今までのいきさつを打ちこんでいた

翌日ふとそこを開くとレスがあった
「たいへんだったんだね。君の悩みはボクの悩みに感じます
何でも話して下さい。しんゆうになりたいです」

そうしてりんは謎のHPにはまっていった

別れは突然やってきた
「このHPは運営者によって閉鎖されました」
なぜ?なぜ?
狂ったように探しても見つからなかった
もう生きる気力は沸いてこなかった
死んだ恋人を惜しむように・・・灯は消えた

ノイローゼの主婦自殺
小さな記事はすぐ忘れられた

あのHPのトラブルは解消された。アクセス可能になった
それは活気的な方法でプログラムされていた超CGIだった
文章を読み取り,相手の求めるレスを表示できるスグレモノだ
アクセス者の文はカウンセリングの症例を読みこませてあるので
似た文を探してから,相対レスを出す仕組み
これで多くの孤独な魂は救われるはずである
ただトラブルが多いのが難点だ
まだ試験段階ですぐ故障する

孤独なあなた
探してみたらどうだろうか?
「決してあなたを裏切らないともだち」という
素晴らしいHPがヒットするかもしれないから・・・

2001/3/3


あとがき

ネットでいやな思いをする事もあるんだろうが
大変の人は「良い思い」をしておられるでしょう
その「良い思い」をできなくなったら?寂しいですよね
そんな大なり小なりネットに(心が)依存する怖さを書きました

アプリケーション

どうも長く使うとハードディスクはいっぱいだ
要らないモノは処分しよう

ムスコが私の作業をのぞいて言った
「ねえ何してるの?」
「要らないものを処分しようと思ってね
ハードの容量って決まっているからねえ」
「ふーん」

いつになく熱心に画面を見ていたムスコだった

夜何やら物音がする
そっと部屋をのぞくとムスコがパソコンに向かっていた
「こんなに遅くまで熱心だなあ」
私がいうと嬉しそうに彼は言った
「うん。ボクも要らないモノを処分しなくちゃって。
リストを作っていたの。」

いつのまにかパソコンを覚えて彼なりに
世界を形成している事に親として感無量だった
しっかりしてくるなあ,日に日に・・
親を踏み台にして成長してくれよ

ある日急な仕事で出張になった
行き先はなぜか小さな離島だった
行ってみると同じような人たちで宿舎はいっぱいだった
共通しているのは「子どもがいること」
みな子どもの自慢を始めた
奇妙な連帯感で場は和んだ

翌朝のニュースは離島に古い人工衛星のかけらが
落下したと言うものだった
無人のはずが何人もの人がバカンスに来ていて
悲劇になったと伝えていた
衛星の落下は予測されていた
危険水域は船舶も航空機も含め立ち入り禁止だった
なぜ立ち入り禁止の離島に人がいたのか
新手のカルト宗教だとか噂は流れた・・・
真相はわからなかった・・・

悲しみにくれる遺族たちとその子どもたち
テレビ画面を見て国民は涙した

カチャカチャ

その時間多くの子どもがネットでつながっていた
「少しクリーンアップしたね」
「でもまだ重いね」
「やっぱ父親より母親が問題だったんじゃない?」
「主婦は暇だから旅行企画には乗るよね」
「でも場所は?社会の迷惑になったらいけないよ」

ムスコはつぶやいた
「ねえ、要らないもの減らしてるよ・・・
地球の大きさは変わらないもんね」
画面にはおびただしい数の「削除リスト」が表示されていた

2001/2/3


書いてていやんなってきました
う・・・ムスコに削除されたくない
もともとは中学生のひとことから考えた話です
「大人ってさあ飲みに行ったりしていいのに
なんで子どもはダメなの?酔っ払って
歩いてる大人見ると街のゴミって感じ」
あは・・・は・・・(笑えない)
ムスコよ,カアちゃんがんばるから削除しないでね

かなりあ

カナリアを飼っていた
学校から帰ると私は鳥かごに引き寄せられて
いつまでも眺めていた、愛しき小さな命

ある日別れはやってきた
いつものようにランドセルをほおって
鳥かごの前にいくと・・・
中は空っぽになっていた

「寿命だったのね,眠るように落ちていたのよ」
母の声が夢の中から聞こえた
母の白いハンカチの中で命は固くなっていた
冷たいその塊に鼻をつけた
つんと何かの匂いがした
命の匂いが彼の体から離れて空気中に散ったように

時間はゆっくり,でも,確実に流れゆく
かごは片付けられ部屋の命の香りも消えてゆく

時間は私の肉体を変えていった
子どもから大人へ、そして老いへ

パサパサと羽の音がする
ひとりの部屋に命の香りが漂っている
あの日のままに固くなった体がよみがえる
そう,お前はずっとそこにいた
窮屈な鳥かごから出ただけだった
私の愛しき命

指にずっしり重みが残る
命の重み
振り向くと部屋を覆う大きな鳥かごが見えた
私はこうしてかごの中で生きてきたカナリアだ
外へ出たいと思うこともなく生きた
外が見たいと初めて思った

彼について扉を開ける
一度も使った事のない羽は動くだろうか・・・
外はどんな世界だろうか

そこにひとつの命の消えた体がある
飛び去った羽の散らばった部屋で・・・

2001/3/3


あとがき

落ちはないただのイメージ文章です
そこに横たわった死体は人間かカナリアか
あなたはどちらだと思いますか?
小さい時インコを飼っていました
2、3年前ハムスターを子どもが飼いました
どちらも私が看取ったんですが
死語硬直で固くなって,その感触が両方似ていました
小動物の,いえ,命って似ていると思いました
普段わからないが死んだ時わかるような・・・

箱の中のわたしたち

 

朝起きる 顔を洗う 着替える テレビをつける
テレビのニュースに怒る 家族と会話する 笑う

「わたし」は脳という箱の中の「連続した」記憶のもたらす幻影
感情はその副産物だ

ある日 私の中で声がした
その声は「わたし」だという 「わたし?」

そう でもそれは「わたし」ではなかった
ひとつの肉体という、機能と場所を共有する別の意識だった
意識 それもまた脳の幻なのだが
問題は「わたし」と「別のわたし」が連続したひとつの記憶でなく
個別に発達した二つの記憶である事だ

肉体を支配する時間は お互いが同調すればかまわない が
別の行動をとりたい時は片方は休眠する事となる

家族は心配した 医師はわたしを「多重人格」と判定した

多重人格?いや多人格といってほしい
わたしたちはふたりなのだから

時間も肉体も共有するものの好みも性格も違う

脳というブラックボックスのイタズラで
多重人格はトラウマの生み出す生存本能だと(逃避による)いう
仮説は当たっていない

脳の領域そのものを二つの人格が分かれて「保存」されている状態
指令を出す基本人格も二つ。独立している
・・・多人格・・・

脳はそのほとんどを使うことなく肉体は一生を終える
「無駄」とも思えるそのスペースに何が,誰が宿っているのか
誰も知らない 「わたし」と「わたし」以外は・・・

脳という箱の中のわたしたち OSがふたつ?
機械に詳しい人は笑うかもしれない
それではキカイは動かないだろう,と

でもわたしたちは動いている

生きている ふたりで・・・

2001/2/17


なぜ脳は色々に分かれているんでしょう?
分業してるんですかね?効率が良いから。
パソコンのしくみに似ているなと思ったけど
脳のしくみを真似してキカイを作ったのかも。

脳の中で理性や感情が複数あったなら
それはもう別の人格と言えないかなと単純に思ったのでした
脳みそ関連本読みすぎた?

性差別をなくそう運動?

女性の地位向上と,職場での差別を無くそうと
日々戦う女たち
だが男社会の壁は厚かった

「平等だ?権利だ?そんな事ばかり言ってるから
女はダメなんだ。男と同じ働きなんて出来ないじゃないか
軍隊だってそうだ。どこの国に男女同等の軍があるんだ?
結局女は男に保護されて甘えているバカな怠け者じゃないか」

どっかの政治家も世の上司も,亭主族も皆同じことを言う
女たちは反論できない

男と同じ働きをしたくてもさせてくれない、できない、現実

それは,働きたくない男にも言えた
男に生まれたばっかりになぜこう働いて,女子どもを養うんだ
男だって女に働かせて楽をしたい
だが男はそうすると「ヒモ」なんて言われてろくでなしと思われる
女は「主婦」ですむのに?おとこは「ろくでなし?」

人口の半分を占める女と、女性の生活がしたい男の利害は一致
膨大な女のへそくりは、世界経済も動かすほどだった
貯蓄を支えていたのは女なのだ。彼女たちがへそくりを放出
こうして人は両性体となった

一応生まれたままの性別を維持するのだが
成人して性を変えたい人は異性ホルモンを投与する事で
休眠中の異性が活動するのだ
これは性的嗜好で性転換したい人にも思わぬ福音だった
あっという間に両性計画は広がった

働きたい人は主に男性。そういう人に尽くして甘えたい人は女性
夫婦も結婚後に性が入れ替わったりすることもある

気がついたときには働き者とそうでない者がニ極化してしまった

働き者・男性 ナマケモノ・女性
わかりやすい図式だった。昔なら各性別の中に色々な人が
混ざっていたのに今や働きの良い物が男性へいってしまい
残った女性はナマケモノばかり。働かないし子育ても家事もしない
そうして彼女たちはいうのだった

「平等の権利をちょうだいよ!」

男たちはいい返す

「同じ働きをしてからいえ!」

サルは洋服を来てもサル
ナマケモノは女になってもナマケモノの女

男性諸氏,怠けているのは女じゃなくて「ナマケモノ」たちだ
あなたの妻や彼女は,男だったらあなたの2倍働くかもしれない


あとがき

「誰のおかげで飯を食っているんだ」という世の夫たち
「仕事と私とどっちが大事なの」と責める妻たち
どちらも同じようなメガネをかけて相手(世の中?)を見てるかも。

生きる、それだけを考えれば自分の生きる食料を自分で得る事や
ひとりでは生存が厳しいから群れで分業する事は、同じ事

例えばライオンは家族単位で構成され子育てはメス、群れを守るのはオス
サルはもっと大きな種族単位だそうだし
アリや蜂は女王を頂点としてピラミッド型の身分がある

そんな風に生きるための本能の分業もあるのだから
もっと人も差別意識を持たずに、生活したら楽なのではないですか?

会社で育児中の人が、例えば子どもの熱などで休むと
必ず負担が周囲に来る。それを感じて子どものいる人は
心に呵責を抱えつつ仕事することとなる

働けないで育児に専念している人もまた
働けないことを理由に呵責を感じる人もいる

それは本当にお気の毒だ(ちなみに私も働く母の立場)

特に子育てで働けない母親たちを励ましたい
子育ては一番の社会参加だと。
子どもが育たない生物は滅びてしまうのだから。
ゆうれい化計画

娘を失ったオチャノズミ博士は一心不乱に研究していた
それは魂と言うものをつきとめ、デジタルデータ化できないか
と言うものだった

そしてついに魂の秘密を知ることに成功
魂というのは人の脳の電気運動による波動の生み出す影、あるいは
幻と言おうかそう言うものだった

と言う事は個人の脳環境をソックリ再現する事で
「本人」の波動を生み出せる
「本人」の誕生である

え?それは魂ではないって?
そう尋ねるあなたは自己の意識は本当に今の自分が
考えていると断言できるのか?
あなたという人間が広大なネットワークで結ばれた
ゲームの登場人物のひとりとして設定されたと
そんな妄想を百パーセント否定できるのか?

こうして愛する娘は戻ってきた
肉体こそないが(人の肉体は人の脳環境であるのだ)
モニターにいつでも映し出される娘の笑顔
「本物の」娘がそこにいた

よく考えるとこれは不老不死でもある
デジタルデータは老化しないし,バックアップもとれ
コピーも作れる・・・・・

失った人会いたい!そう思う人は多い
博士の研究は世界中へ広がっていった

電力需要は世界的に増大した
電力会社は節電を呼びかけたが,愛する人との
再会に人々は「自分だけは」と接続しつづけた
そして・・・・・

世界大停電は起こるべくして起こった
補助電源はそんなに長時間はもたない
世界中の「愛された人たち」は「死んで」いった
愛する人をまたも失った人々の悲しみは
生きる力を奪った
画面を愛した人々は自ら死んで行った

今,本当の意味で人々は愛する人々に
再会している事だろう

2001/1/29


あとがき

今は亡くなった人で「会いたい」人はいます
ゆうれいでもいいから,と思ったことはありませんか?
黒魔術や降霊術の現代版ということで
やっぱりデジタルゆうれい
人は言葉なりってどこかで聞いたんですが
「その人の」言葉が返ってくれば嬉しい
だから画面に向かうオチャノズミ博士は
私です・・・

快適な生活

寒い日が続いている。身も心も凍り付きそうだ
エアコンとはかくもありがたいモノだとしみじみ思う
最近アレルギーがひどい。空気清浄器は必需品
不潔は大敵。ハウスダストは病気の元
除菌製品以外は使わんぞ

清潔な人々,清潔な惑星
そこに親切な宇宙人がやってきた
彼等はステキなプレゼントを用意していた

プレゼントスタンバイ・・・さあ,オープン!

ところが突然人々は病に倒れ始めた
惑星は・・・沈黙

宇宙人反省会議
どうしてこうなってしまったんだろうか
われわれのしたことはどこの惑星でも
喜ばれていたのに

宇宙人のプレゼントはタイムマシンにより
昔の地球の自然な空気を送る事だった
文明はどこの惑星でも環境を悪化させている
自然な空気が戻ったと
このプレゼントは喜ばれたのに・・・
何故地球だけが,人類が死んでしまったのか

分析結果
地球人は環境に適応した体を持っていなかった
地球人は環境から人間を隔離することで
生きてきた,無菌室状態だった
我々はその無菌室に自然な風を入れてしまったのだ
雑菌に対する免疫力もなく温度・湿度などの
状況への体温調節も退化していた
自然の空気は地球人には猛毒だった
免疫のない患者のように地球人は死に絶えた

仕方がないから法を破って過去から人間を
移住させた。また数世紀後ここに来よう
その時同じ過ちを繰り返していないことを祈って・・・

2001/1/29


あとがき

寒くてコタツから出られない状況でした
今電気が止まったら?
それから友人は無類の除菌マニアで
あれは絶対抵抗力ゼロだと思いますよ
うちはきっと抵抗力はバッチリと思います
ズボラでうがい手洗いなども
「ア,忘れた」という感じですから・・・

最愛の人

愛するあなたへ
あなたと出会えたことを神に感謝します
私の最愛のあなた・・・
本当の自分を愛してくれる人を 私は探していました
私の全てをわかってくれて、 私の全てを好きになってくれて
絶対に裏切らない、あなたを 私も愛しています
一生愛します,私の命の限り・・・ 

そっと手紙をたたんで封筒に入れた
私の名をそっと書いた 「りんより」

今まで孤独だった
男の人は誰も私を好きになってはくれないし
女の子は表面だけの友達ばかりだ

ブスだからって 相手にしてくれないなんて!
(私は美人よ!愛する人がいるだもの!
世の男が見る目がないのよ!)
そんな男はもういらない
百キロの体でも愛しいと言ってくれるのが 真実の愛でしょ

テレビで男にふられ 自殺したニュースをやっていた
そんなくだらない,あなたの魅力に 振り向かない男なんてやめなさい!
そう言ってやりたかった

私は幸せだ。最愛の人がいる!
私を愛してくれる,その心に 私も答えようと思った
思いきって手紙を出した

次の日手紙があった
どきどきした
封筒の裏には最愛の人の名があった

「りんより」

2001/1/17


あとがき

やっぱり鳥取の赤ちゃん事件の犯人の事で
こんな話を書きたくなりました
よく考えると不気味な話ですが犯罪してまで
異性にしがみつくよりもっと自分を愛しましょう
(私って、やっぱヘンだよー!?)
でも、まあ鏡を見てうっとりするより(こわい?)
異性に溺れた方が健全かな・・・

命の交換

あとわずかの命・・・宣告された私はぼう然としていた
まだやりたい事もいっぱいあったし絶対死にたくない

そのとき何者かがささやいた

「他人の命と交換できる・・・どうする?」

そうは言っても人の命を奪ってまで生きたくはない

振り向くと誰かのイメージが頭に浮かんだ
その人はまさにロープに首を入れようとしている
「自殺!?」その一瞬思った
「死ぬくらいなら私にその命をちょうだいよ!」

何日か過ぎて私は信じられない言葉を聞いた
「奇跡としか言いようがない。病巣が消えている」
私は退院した

ふと新聞を見ると小さな記事で自殺のニュースがあった
頭の中で誰かがささやく。
「その方の命があなたへ交換されたのですよ・・・」

日本中でそんな現象が起こっていた
死にたい健康な人はたくさんいたし,死にたくないのに
重病の人もいた。この不思議な命の交換は
とても良い事だった,誰もがそう思った

命はひとりに1つ。その原則は変わらなかったけど
死にたい気持ち,生きたい気持ちそのままに
人生を選択できるのだ

あのささやきは一体誰だったのだろう?
人々は考えた。神様に違いない,いや人間を試すための
悪魔の誘惑だ。色々な論争になったが結論は出ていない

さて,あの声の主は神か悪魔か、それとも・・・・・・・

2000/12/20


あとがき

この話はよく友人や家族と
「生きたくても生きられない人がいるのに
健康で自殺する人がいるなら,交換してよって思うよね」
という話がネタです。オチも何もないんです
そのまんま!

魂を売る 

借金はもうどうしようもないほどになっていた
もう死ぬしかない。あきらめて臓器を売り死後保険金で
家族にも安してもらえるだろう
男は業者を呼んだ

すぐにかけつけた業者に切り出すと意外な事を言った
「その覚悟がおありなら臓器なんかでなく
魂にしませんか?体は無傷,特殊保険もあります」
「え?」

売る臓器は魂の全部でなくてもいいらしい
「自分というものが魂とすると,その中の1つか2つで
けっこうです。良心,下心、見栄,欲,悪意、など無数にある
その中から自分の要らないものでかまいませんから」
と言ううまい話だった

一も二も無く飛びついた。

魂の「悪意」を売った。心は本当に洗われた様に
すっきりしていった。感謝さえしていた
世の中の人はほとんど「悪意」や「欲」などの
人の暗部を売った・・・

しかし魂の値段は不思議な事に善意も悪意も
同じ値段なのだった
これは世間も納得いっていなかったが
借金はなくなるし、心もきれいな人になるなんて
ありがたい事だからま、いいか・・・

世の中には偏屈や世を憎みつつ生きる人もいた。
彼等はなんと「良心」を売っていた
もともと良心の部分が少ないからあまり社会に
混乱は起きなかった

今,社会は安定している
大多数のきれいな心の人と,一部の悪意の人
それでいて皆が心のどこか一部が欠けていると言う
連帯感・安心感・・・・・・
生まれてから始めて訪れた平安
生きる事への感謝と慈愛
人の心はきれいなほうがいいに決まっている
「悪意」の人達もわかってもらって仲間になるように
がんばってゆくつもりだ

マクア星人にとって地球侵略は実に簡単だった
「こんなにもろい心も珍しいよなあ」
金融業社の男は仮面をはずして笑った
「さあ,欲望のあるいい世界へ帰ろうか!」

2000/12/19


あとがき

人は悪人、善人とハッキリ分かれるわけではなく
その人の良い部分、悪い部分、その他の色、と複雑で
個性というのが一番かなと思います

欧米のような善悪、シロクロはっきりなんてムリ

日本人はその辺を繊細な感覚で知っていて
はっきりしないグレーなイメージに見られてしまうけど
欧米人にない曖昧の良さを持っていたいと思います

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