ショートもどき(創作話)
憎しみが消える日
私の息子は雨のように降り注いだ爆撃で死んだ
私の夫は戦地で蜂の巣のように撃たれて死んだ
私の娘は食べ物を探しに外へ出て銃撃に巻き込まれて死んだ
そうして私はひとりぼっちになった
生きていく意思もない
そう思った私を生かしつづける「希望」は・・・
仇を取ることだった
敵をひとりでも多く殺す事
そうしていつか敵国が負けて、根絶やしになって
それからでも、遅くはない。私が死ぬことは・・・
そう思って武器を取る
どこへでも行こう
何でもやろう
怖い?一番怖いことは家族を失う事だった
それ以上の事はない
あとは敵をひとりひとり毎日殺す事が生き甲斐
戦闘が激しくなった来た
このごろはみんな友達も「いなくなる」
2度とあえない(いやいつか必ず会えるだろうアタラクシアという
場所で会えるのだが)みんな命をかけて敵に向かっていく
自爆テロは怖い・・・そんな情けない事をいう敵国の人間は
振り向くと自分の家族が次々に死んでゆく恐怖と
比べた事がないからだ
私も明日・・行こう!
敵を多く道連れに出来たらうれしいのだが・・・
******
そんな日記が綴られている
私は愕然としている
この言葉を書いた自分に
あれから私は戦地に行くはずだった
でも突然の停戦
停戦に納得行かない民衆
それをなだめる為に一粒の薬がみんなに配られた
安定剤という事であった
それを飲むと・・・高揚していた気分が収まった
と同時に怒りや憎しみもまた薄れ始めた
憎しみを捨てよと、報復合戦を止めよと
それこそが戦争のタネだとして
開発された「愛の薬」だ
敵国の兵士、家族を殺した兵士にもまた
家族があったろう
ひとりひとりを思いやれば
誰も(敵でも)殺せなくなった
そして・・・平和が訪れるのか?
*******
日記を読みながら私は泣いた
もう憎しみのかけらもない
それは・・・私がもう生きてゆけないと言う事だ
家族がいない
ひとりぼっち
敵と戦って多くの人を殺した自分自身の血の匂いの手
憎しみは消えても
元にはなにひとつ戻りはしなかった
気がつくと仲良しの彼女も息耐えていた
彼女もひとりぼっち
復讐を忘れてもう生きていけなかったのだ
行かないで
待って
私も行くわ・・・
********************
テレビを見ていたらイラクの、息子を殺された母親が自分も
戦うと息巻いていた。絶え間ない自爆テロ
本当に怖いんですけど、息子の上にミサイルが降ってきたら?
私は同じ事をするかもしれません
国の為でなく、誰の為でなく、自分の怒りのために
人は強い喪失感から抜け出すには大変な努力をしなければ
なりません。それは良い方向、方法ならいいでしょうが
悲しみを「早く」乗り越えられるのは怒りではないかと思うのです
そこに正義などありません。理屈などないのです
本当に見ていられなかった
亡き息子の為に銃を持つ母
「多少の犠牲は仕方がない」という米英軍
もしも自分があの悲劇の母親だったら?
そんな言葉を許せるのでしょうか?
やめる勇気
仕事でも何でもそうですが
やめる勇気って本当は大変だと思います
まして始まってしまった戦争を中途で止めるなんて
でも、もしもそれを決断するならば
それこそが勇気ある決断だと私は思います
ブッシュ!勇気を!2003/4/1
希望の軍隊
戦火はそこまで迫っていた
永久戦争放棄を掲げるわが国も戦闘準備をしなければならない
だが、近年の少子化によりただでさえ少ない若者が
戦争に取られるのはある意味で戦争よりも国の危機だった
国を守る軍隊は必要だ
軍隊のない国は国とは言えない
軍とは人。人の血である
でも、若者の血は悲しい
奇策を出したのはひとりの老人だった
「徴兵年齢を引き上げましょう。体力があれば年齢の上限は設けずに」
彼はただの「年寄り」だった
孫と公園を散歩するのが一番の楽しみの。
お日様の光の下で微笑む孫
自分の腰までだったのその子が
自分の胸、肩、そして見上げるような青年に育った今
あの宝物を戦争に取られたくない
胸を裂かれる思いがした
大人は・・・子どもがいなければ、若者がいなければ生きていけない
若い命は希望だ。彼は思った希望を・・・守りたい
全国からあっという間に志願兵は集まった
皆成人した子どもや孫を持つ高年、老年の「元若者」たちである
思いはひとつ。子どもを戦争に行かせたくない・・・
国を憂うわけではない
他国の人と戦いたいわけもない
でも、子どもを死なせたくはない
やがて上陸した敵国の兵士たち
若く力強い兵力に老人の軍が勝てるはずもなかった
老人の屍を越え首都を制圧した敵国軍
しかし、そこにいるはずの国民はいなかった
若者は国を捨てていった
ある者は外国へ逃げ
ある者は寒村へ逃げ
それぞれに自分だけ、生き延びようと・・・逃げていた
国を思う気持ち
それが薄かったのか?
でも・・・・・それも、いいだろう
死にゆく意識の中で老兵たちは思った
自分たちは何を守りたかったのか
国か?いいや、自分が守りたかったのは子どもたちだ
どこへ行っても、生きて、自分たちの血をつないでくれれば
望みは叶う
敵国は老人を盾に、逃げた若者を嘲笑った
臆病な国民となじった
でも、本当のことは未来になってからしかわからないだろう
世界中に散らばりそこで生き抜く同胞たち
それは花が散っても遠くへ花粉を飛ばし開花させるように
子孫を残す希望
戦争に殺戮以外の意味はないさ・・・
無益な事だからこそ若い命を惜しんだ事
いつか歴史が判断するだろう
人類の賢明な選択として・・・
*******************
イラクへの攻撃のカウントダウンが迫っているように思えます
フランスの反対は強固ですけど(これも実は石油を中東に頼っている
フランスは戦争したくない、ってのが本音でしょうけど)
アメリカは攻撃するかも。意外なことをテレビでいっていました
軍というのはあれだけ多くを派兵して、戦争せずに帰る事は
士気が下がってしまうから、あそこまで準備したら開戦せざるを得ない
という見解です。もうアメリカは国際世論がどうであれ、やっちゃう?
北朝鮮、イラク、再びテロを呼びかけるビンラディン、当のアメリカ・・・
でも、戦いに出るのはいつも若者です
私は若い人が死ぬのは一番嫌です
老人なら死んでもいいとは思いませんが
誰かが死にに行かねばならないなら
息子を戦地に送り出すのはいやです
それならば息子には生き抜いてもらって
私が代わりに戦地へ行きたい
きっと子どもや孫がいる人は同じ気持ちだろうと思って
こんな話を書きました
日本だけじゃない
世界中どこの国でも同じ気持ちでしょう?
戦争はどんな理由をつけても所詮は破壊と殺戮です
ホモサピエンス・・・知性の霊長類?
ならばそんな名は返上した方がいいでしょう
知性どころか力でボスの座を奪い合う猿と
今の人類はどこが違うんですか?
どこが知的なんですか?
知的というのは武器の性能が石つぶてからミサイルになっただけで
野蛮なところは変わってはいないでしょう?
と悲観論を言ってみても、理想論(反戦・非戦)を言ってみても
現実は動いています。何がいいのか、どうすべきか
結局自分(国)の利益、自分の保身(国)の事くらいに限定して
考えるのがやっと・・・ですね ふう (-_-;) 2003/2/14
本当の自由
世界に配信された一通の文章は異国に消えた若者からだった
私の生まれた国は作物は豊かに実り、天に届くほどの建物を
有する国だ。でも人の心は荒廃していた
親子の絆はとうに無く、男女の愛は一過性にのもので
他人への尊敬など死語であった。善悪の価値さえわからない国
着飾る多くの若者たちが増えるほどに
心を失うのは何と悲しい事だろう?
そうして私は国を捨てた
本当の自由とは何だろう?
答えはここにあった
自由とは食べたいものを食べ、行きたい場所へ行く
そんな形だけのことではない
人は皆生まれながらに平等なのだと
全ての人が自覚した時、真の自由が生まれる
苦悩する人、豊かな人、そんな人の人生の凸凹を無くし
みんな同じスタートラインに立ってこその「自由」
あらゆる「人間」に上下があってはならない
自分が辛い時他の人もまた辛い
だからこそ何でも乗り越えられるし
自分が幸せならば他の人もまた・・・
そうして物資は無くても、心は満ちたりしている
これが色々な時代や文化で理想としてきた社会だ
私は声明文を生まれた国へ発信すると電源を落とした
明日はメンテナンスの日だ
多少旧式だけれど私の「入れ物」はまだまだ大丈夫という
ここへ来て肉体の脆弱さを機械化で改善してもらった
ありがたいことだ。私は脳で社会に貢献できる
肉体が強いものは生身の良さを生かしスポーツの分野へ
何も無い者であっても、肉体は必ずや社会へ貢献できる
(医学に生身の肉体はとても役に立つ)
誰も無駄な者などいない。全ての人間は必要な人間である
また、人間同士に上下もあってはならない
確かにあがめる「人間」などいない。すばらしい・・・
あるのはただ人間同士が役に立ち合うことだけ
人の社会は貢献することで成り立っている
電子化された「脳」から綴られた文章に
満足げに彼らは笑っていた
「人は支配されることや権力を嫌う傾向があるが
平等や慈愛、貢献などという言葉には惹かれるようだな」
「そうそう。見える王はイヤだけれど
自分の自由意思で、自分を律するならば納得する」
「先進国ほどムズカシイけどな。人と同調しようなんて
考えるやつが少ない」
惑星の地下に隠れている巨大な宇宙船の中で
多くの人間が「飼われていた」
何のため?もちろん地球侵略であるが、攻撃すれば抵抗にあう
確実に安全に侵略するためにはやはり洗脳が一番だ
宇宙人の実験で人間を誘惑するキーワードがわかった
それは「自由」と言う言葉だ
自由を奪うために「自由」を囮にする
宇宙人たちは笑って、いつか遠くない未来地上に船を出し
「平等な人間」たちが自分たちをあがめるのを想像し
祝杯をあげた・・・「自由、に乾杯」
*****************
拉致問題でちょっと思ったのでショートを思いつきました
拉致被害者の生存者全員が日本へ帰国を希望していないと聞き
それは監視されてそう言わざるを得ないのだろうと思いますが
一方で一年や二年でない20年以上の月日が
本当に日本に帰ることへの不安などに変わっている可能性も
ゼロではない、と思いました。それは住めば都と言う言葉のように
今の環境に適応している場合と、長年の洗脳により「自分の意志で」
帰りたくないと思う場合、ですね。問題は後者です
カルト教団の信者などにも言えますが脱会しないほうが
その人には安定(しあわせ)している、というか
悪い状況だけれど本人の心ではそれで落ち着いているならば
良かれと思って外部で「社会復帰」させることが
本人にはとても辛かったりしないかなあと・・・・・
だから「帰国後のケア」は大事になってくるのでしょう
ところで。色々な国で独裁政権の国民は必ず言葉で
指導者への尊敬の念を表しますね。イラクなどもそうだし。
国民の忠誠心を忘れさせないためでしょうか?
でも外部から見ると逆効果ですね。いかにも言わせてるゾという
王家を有する国、イギリスや日本で言葉の冒頭に
「敬愛する女王陛下のご配慮により」とか言いませんよね
オリンピックでメダルを取って感謝する人が必ず指導者とか。
(もちろん親派の国民もいるでしょうけど)
王家があるかどうか、よりも拒否や非難の自由があるかどうか
が重要でしょう。もちろん自由は独裁と両極なので
自由の取り入れ方で自身の政権の崩壊の危険もあるけれど・・・
というわけで先進国のよく言う「自由な言論の許される社会」は
とても魅力的な言葉で、今はそれを元に何か世界をひとつの
イデオロギーでまとめている気もしました
でもそれを攻撃の材料にするのは、やっぱり良くないと思うけど
(米のイラク攻撃案に対して)
人心のまとまった社会は抵抗はすごいでしょうけど
落ちたらまとめて「落ちる」気がしました
それがショートのテーマなんだけど?
(説明しないとわからない稚拙なショート 笑)以上です
*******
生存者の帰国が実現すると良いですね
本当は本人もご家族も会いたい(日本で)でしょうから
恋人たち (2001年 39歳 今作った 笑)
恋人の事故を聞いたのは、夜中だった
何を言っているんだろうと、頭はそれを受けつけなかった
無理もない。愛するその人はついさっき私のこの部屋から
帰って行ったばかりなのである。まだ暖かい彼の感触が残っている
その彼が?
病院に行くと面会はさせてもらえなかった。絶対会いたいと
訴えたが「今はダメです」身寄りのない彼にとって自分は
唯一の面会の権利があると主張してみる、が、
「容態を観察してからです」
数日後病院に行くと彼は特別室に移されたという
面会は可能だがそれを彼自身が望んでいないというのである
そんなはずはない、そんなはずはない、そんな・・・・・・
私は呆然として家路についた。家に帰っても何も食べる元気もなく
明かりもつけずただ部屋に座っていた。ふと病院でいわれたことを
思い出した・・・「どうしても話がしたかったらここにアクセス
して下さい、そういう患者さんの伝言です」
アクセスって・・・?私は無性に腹が立ってきた
ケガの心配をして眠れぬ日を過ごしているのに彼は呑気にキカイを
いじっているのか。そんな事をする前に顔を見せて安心させて
くれるのが恋人でしょ?恋人・・・もしかして私は彼の
恋人ではないのか?他に彼には愛する人がいたのか?
私の不安と妄想は段々膨らんでくる
そしてその不安を振り払うかのように私はPCの電源を入れた
ディスプレイには私に宛てた彼からのメッセージがあった
ケガは重く命は助かったけれど、もう一生病室から出られそうにない
自分の事はあきらめて他の人を見つけて幸せになって欲しい
そんな内容だった。繰り返し繰り返し読む・・・いや!いや!
納得は出来ない。例えどんな体であっても、こうして
彼の言葉を聞ける限り私は彼の恋人のはずだ
やりきれない思いで舐めるように見ていると隅にこんな文字があった
「もしも、の、チャット」もしも?もしもあきらめきれない時は、
という意味なのだろうか?彼のこんな小細工に腹を立てながらも
私は入っていった・・・・・・
そうして数日間やり取りをした。彼が本当に重篤な状態である事
器械の助けで生きている事、なによりも風貌が変わってしまっ事
それはわかった。私は決めた。キーを叩く・・・・
「会いたい。絶対に!」
彼が渋々面会に応じると言ったのは「もしも僕を見て怪物だと
逃げてもいい。もちろん別れるから」という彼の覚悟だったろう
病院に着いた。受付では私の氏名を確認すると案外すんなりと
入室許可をくれた。そして・・・長い廊下の隅の一室のドア・・・
彼は?どこ?天井から綺麗な声がした「僕はここだよ」
そこには黒い箱が置かれ幾つもの配線がされていた
天井にスピーカー、箱の近くにビデオカメラ・・・これは?
静かに彼(だと思う、声は彼のそれではなかったが、話し方は
紛れもない彼だ)の声がスピーカーから流れてくる
「その箱の手前が開くようになっている、開けてごらん」
言われた通りに手をかける・・・そこには・・・?
アッという自分の声に驚いた。そこにあったものはヒトの脳らしき
組織と器械群の塊である。私はつぶやく「まさか・・・あなた」
「そう。本当は死んでいたくらいのケガだった。でもこの病院の
チームは数年前から脳の損傷のない、あるいは少ない患者で
体はもうだめだという者を生かし続ける実験がされていたんだ
これが成功すれば優秀な人が万一にもケガをしても、その頭脳は
保存できるからね。僕はその布石だ。もちろん僕は拒否できる
病院は僕に確認を取ったよ。君には死ぬ権利もあります、と。
それは簡単な事だ。普通の治療をすればいいのだから・・・
僕はこんな機械になるくらいなら死んだほうがマシだと思った
だが、生きてれば色々な事を考えられる。そして僕にできるのは
考えることだけ・・・考え続けたい、怒りたい、悲しみたい
僕は器械に生かされる事を選択した」
私は目を閉じた。彼を、この姿の彼を愛してゆくのか?
恐かった。彼が・・・私は病室を飛び出した・・・何故?
エレベーターでなく階段をトボトボ降りていく
すると階段の近くの部屋から若い女性の笑い声が聞こえた
恋人の看護をしているようだ。怒りと嫉妬でその部屋に向った・・・
すると・・・そこにはベッドに横たわる青年がいた
私は思わず彼女を見た。彼女は私が目に入っていないようだ
かまわずお喋りを続ける彼女「でね、部長ってもうムカツクのよ」
彼は半分開いた口と目はぴくりとも動かない
しばらくして彼女が「じゃあね、また明日。あの看護婦さんあなたに
気があるみたいよ。浮気したらひどいわよ」彼女はいいながら
彼の体にそっと頬ずりする・・・アイシテル・・・
彼女が去った病室で青年の体に触れた。温かい。微かに上下する胸は
肉体が生きている証拠だ。しばらくすると医師がやってきた
「関係者ですか?」「いえ。迷ってしまって・・・」
私の顔を見て医師は納得したように言った「ああ。特別室の・・・
恋人の方ですね」そして目の前の青年がもう数年この状態で
回復の見込みはないという事毎日通い続ける恋人の事、を語った
医師は言った「あなたの恋人はもっと違う状況だ。でも、本質は
同じかもしれません。彼はあなたの将来を心配していますよ
私たちのやっている事は自然に背いている、でも、これから
不自然な形で、生きると言う事も増えるでしょう、不本意でも。
その時本人も周りも辛い・・・でも、生きる事は意味があるはずだ」
お喋りが過ぎたようだと医師は言った
私は青年の病室を飛び出した。彼女は彼の命の宿った肉体が必要なのだ
血の通った温かい体・・・それは彼であって、彼女の永遠の恋人だ
私は?さっき見たグロテスクな箱の中を思った
もう彼には暖かな肉体は無い。あの青年のような鼓動も無い
でも・・・そこに確かに彼の意思はある。彼の言葉がある
彼の・・・命はある。私は彼の言葉を受け取り続けたい。
私は彼の病室に飛び込むと言った「まったくカッコ悪い箱!
病院てセンス無いわよね」そういって黒い箱に触った
「配線だらけで抱きしめる事も出来ないわ」
そうして、私は想像する
何十年の月日が流れる。器械の彼とケンカする私は箱を蹴っ飛ばす
箱にマジックで落書きをする、時が過ぎ私の頭は白髪になる
やがて肉体が弱ってくる、私はたぶん肉体と老いて死んでゆくだろう
彼はその時どうするだろう?一緒に死んでくれる?いいえ、きっと
彼は生き続けるだろう。脳の限界のその日まで。生きる意味を探し。
白髪の私が病室に向う、その時あの眠る青年の傍らに
白髪の恋人が楽しそうに話しかけているだろうか・・・
*************************************************************
長くなりました。昔友人が書いた脳(ほとんど器械)の話と
人は何を愛の対象にしているか、を考えていたらこうなっちゃって(笑)
例えば脳死・・・脳は死んでも肉体の温かさは確かに本物です
ずっと肉体を傍に置きたい、それは患者さんの家族の切ない願いでしょう
また一方でもしも精神(脳)はそのままで肉体が消えたら?
あなたはその人を愛し続けますか?愛し続けられますか?
話題の映画「A.I」ではロボットの子どもが描かれているけれど
(現代版ピノキオですね)キカイは愛せないですか?
温かい肉体が無い事が愛も奪うのでしょうか?
ムスコを見るとやっぱり言ってしまう「お前ロボットでも好きだよ」
・・・ムスコ・・・何言ってんだか、と知らん顔(笑)
もしも今ご家族などが病気やケガで治療されている方がいたら
ごめんなさい。この作品でお気を悪くされたらお許し下さい
世界一の女
今年のコンテストの優勝は私だった
この1年に私を買ったお客の数は世界一
私は文字どうり女の頂点に立った
私を賞賛する男の言葉、金の束、目に見える自分の価値
客のつかない女たちの選択は平凡に特定の男に隷属する
「結婚」という制度も醜い魅力のない女たちには必要なのだ
過去の愚制度と廃止論も出たけれど、存続したのは
こういう不細工な女たちのために残したんだろう
私の目線だけに金を出す男もいる
でも魅力のない女は容姿やセックス以外のサーヴィスも
しなければ食べていけない。床を磨き料理を作る
箱のような小さな部屋で・・・
さあ、私は久しぶりの休日をどう過ごそうか
それが今の悩み
来週の予約は、大統領だった
昔はそれもスキャンダルと言われたそうだけどナンセンスね
公金でなければ誰とデートしようが関係ないでしょう?
世界一の女の胸元には数億のダイヤが揺れていた
ずっと昔、母親が肩身に残したペンダントはその豊かな胸に
ふさわしくはない。どこで無くしたかも覚えてはいない
母に美貌の肉体に産んでくれたことは感謝していると
微笑んで窓から見る空にウィンクした
*********
えー、体を売ったの数が多いほど価値がある、という設定に(爆)
もちろんネタ元は公金の横領犯の妻、事件ですが、
目に見える数字で人の価値が計れるならば?
やはり良い事ではない気がします
自分の価値って考えたことありますか?通信簿や営業成績など
目に見えるもので無い限り、(特に同性や団体でなく対異性の場合)
あいまいで自己判断によりますね。他人の判断もまたアヤシイ
モテナイ、モテる、とテンテコなものさしに、お年頃には悩む
高校で。モテる子がいてちょっとうらやましく思っていたんですが
男子の話を聞き、そのひとことでモテるという意味が変わりました
「あいつすぐやらせるぞ」盛り上がる男ども。必ずしも彼らは
「好き」で付き合うのと違うんだなと認識。男ってオオカミだなと
最初に感じた出来事でしたー。数でモテるかを計るのは「違う」と
若いあなたに、言っときましょう(説教 笑)
われはナンバー
私は今病院にいる。オーバーワークで静養が許可された
順調に体力は回復している
回診の時間。今日の当番はナンバー46376982の子か?
だといいなと密かに期待している
本当は体よりもこのところのすっきりしない気分が気になった
より良い環境、より良い自己、それらは行き届いた管理による
いい時代だ。古い時代考えて失敗した全体主義ではなく「個人の」
尊重により逆説的に達成されたのは皮肉なことだが(笑)
個人の要求は何でも叶う。例えば人を恨み殺意が生まれる
昔なら我慢するか、行動して殺人犯になるか、しか選択肢は無かった
今は違う。殺意は我慢せず行動前に「ハコ」に入ればいいのだ
そこで、実行される殺人。実はそれはバーチャルな脳だけの幻影だが
自分の殺意を達成することの満足感と同時に、殺人と言う愚行への
反省、さらに、実際には殺人をしていないと言う安堵・・・
精神ケアを最後にしてもらい「ハコ」から出る
すると何の心残り(ストレス)もない最良の精神状態で生活できる
社会秩序というのは個人の欲求を我慢してまで守るべきルールだが
より良い「社会」ほど個人は小さくなる。するといつしか個人の
欲は社会そのものを壊すのだ「もっと食い物を!」「もっと金を!」
人の強欲さ故に社会は壊れ、人も壊れる・・・
だが、個人の欲求への徹底という「極 個人尊重主義」が流行
このとんでもない(と昔21世紀あたりの人なら言うだろう)思想が
世界を救った。自分が死にたくないから、戦争をしない
自分が食べたいから食を生産する、自分が・・・自分が・・・
長い間人を罪悪感に縛っていた「利他主義」「自己犠牲」「人類愛」
などのまやかしから、人は解き放たれた
本当は自分だけが一番なのだと、それを表現する事が美徳となり
自分を満足させる事は常識となった。満たされた故に他人への
攻撃や搾取は減る・・・
今「わたし」には名前が無い。自分が、自分の要求が通るのだから
名など要らない。ただ医療ケア、買い物などサーヴィスには
個体の識別がいる。そのためにナンバーが個々人にあてられた
合理的だ。自分が世界の中心なのだから名など・・・・・・
夢を見たことがある
恋人(古い言いかただ。肉体的、精神的接触を持つ他人という
言い方が正確)が私を見て微笑む。要求はなんだろう?
何がほしいのか?だが夢の中の彼女は何も言わない
「名前を教えて」彼女の白い指が私の唇をなぞる
名前?ナンバーだろう?住所も連絡も全て楽につながる
「そうじゃないの。あなたを好きと言う時の名」
そう、あの夢を見てから私は気分がすぐれなかったのだ
馬鹿げた夢
個人とは、私とは?不合理な時代の不合理なシステムの残骸だ
ナンバーひとつあればいい。名など要らない。欲しくも無い
私は女の夢を振り払うように、ハコの予約を入れた
ハコから出る時にはくだらない夢などもう、思い出しもしないだろう
・・・さようなら・・・どこかで女の声がした
**************
いかにも見え見えの住基ネットがヒントって感じ(笑)ですが
実はどんな安定した社会システムもきっとうまくは続かなくて
個人の不満で壊れるんだろうなあと、いつも思っているのを
話にしました。人と比べてシットする行為自体が自分が人より
多くを持っていたいというエゴでしょう。十分腹を満たしても
「隣はもっとうまいものを食べている」と悔しいわけです
ひいては国同士の利権争い(戦争や経済摩擦)になったり。
どうしても本当の意味で人は利他にはなれないのだと、思います
まあ、競争心から生み出されるものもまた多く、スゴイのでしょうが
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