昔のノートから

高校時代

*************

1977年 16歳

命のうつわがある
時を経てうつわは
少しずつ壊れゆく
小さな傷がいつしか全身を覆って
うつわは割れる
それは始めから決まっていたかのように
綺麗に
割れるのであった

時よ時よ つなぎ目を戻しておくれ
元のうつわに 私を戻しておくれ
うつわが無ければ 返れない 帰れない カエレナイ

できないよ、と風がささやく
お前のうつわはもう無いよ お前の行き場所はもう無いよ

では私はどこへいけばいいの?
私のゆく場所はあるの?私のうつわはあるの?
無いさ ないさ ナイサ・・・風がささやくそして私は消えてゆく 私はいなかった。どこにもいなかった
後には割れたうつわが残った
この世に「在る」のは割れたうつわだけ・・・
命は現し世に見えるまぼろしか 神の子羊の見る夢か・・・

創作です 長くて暗いから眠らないでね(笑)

ユニコーン (1976年)

一角獣 ユニコーン 美しい身体と鋭い角を持つ
伝説ではユニコーンの角は処女に突き刺す事は出来ないという

彼は森の奥で一人ぼっちだった。暖かい者を待っていた
それは、心であれ体であれ暖かさに飢えていたのだ
孤独とは「淋しいもの?」わからない わからないのだった

ひとりぼっちであること
それはまだ夏のぬくもりが過ぎたばかりの秋風に過ぎない
本当の孤独は何もかもを凍らせ生命の存在を許さない「白い」冬だ
彼は真の孤独だった
ずっとずっと そこで暖かい者を待っていた

暖かいとはどういう事だったろう?彼は考える
しかし それは徒労に終わる
彼の記憶は厚い氷の下なのだった

あるいは生あるものの血かもしれない
「好きよ」そういって美しき者が彼に触れる 彼はそれを裂く
彼の身に温かな血が流れ、その温かさに彼は微笑む

そうだったろうか?と彼はまた想像する

あるいは大地そのものかもしれない
春はまさに生命のカーペットで大地は埋まる
彼の足の下には冬を生き抜いた植物たちの勝利の声と
冬を越せなかった者たちの声とが交じり合い響く

そうだったろうか?と彼はまた想像する

もしかしてこころの事なのか。それは一番バカバカしくて
笑ってしまった
心がどこにも存在しない事は知っている
神しかこころは持たない 生きるものにはこころが無い
それは当たり前の事なのに。
しかし・・・と彼は考える
もしも生きたるものにこころがあるのなら
神はこころを持たないのか?必要が無いから・・・

彼は笑った 久しぶりに大声を出した
自分が子供のような事を考えてしまって 少し恥ずかしく
楽しくなった でも彼は思った 自分は子供という時代が
あったんだろうか?わからない そうわからなくていいのだ

*************

町にひとりの女がいた 
彼女は12歳の時から仕事をしている。両親はいないが
3人の妹たちに毎日食べさせてやっている
彼女は気立てが良い やさしく 美しく 天使のようだ
彼女は一生懸命働いている 辛い仕事でも かわいい妹たちに
今日もパンとスープを食べさせてあげたいと願って。
涙は見せず ただ天使のほほえみで仕事をする
ひとりになったベッドで泣いているとしても・・・
彼女の仕事 それは町の男たちに体を売る事だ

仕事が終わって水浴びをする
汚れを洗って着替えてから 神に祈る

 神さま 今日もお仕事をありがとうございました
 これでまたパンもスープも買えます
 でも神さま 私はあなたのおそばには行けないのでしょう?
 キナおばさんはいつも云っています
 お前の仕事は地獄に落ちる仕事だって・・・
 私は悲しいです この仕事しか知らないし できません
 本当は私はとても辛いんです なぜかしら?
 お金はたくさんいただけるし お客さんはお前はきれいだと
 ほめてくれるのに・・・悲しくなります

 おばさんは男の人に体を触らせる事はいけない事だと
 教えてくれました きっと私は花嫁さんにはなれないんでしょ?
 角のニジーのように白いドレスは着られないのでしょ?
 これはいけない事を毎日している私への神さまの罰なのでしょ?
 でもいいのです パンの為なんだもの
 でも・・・妹たちはあなたのおそばに行く事ができる人間ですよね?
 妹たちには 男の子たちの指1本だって触らせないわ!

彼女は神を愛している 人を愛している 自分の運命を愛している

************

別の時間 別の空間 そこにもひとりの女がいた

彼女はとても激しい気性の持ち主だ その瞳はいつも刺すように
人を見る。彼女は愛する事が、生きている事と同じくらい、いや
それ以上重要で、愛する男には全身全霊で愛を注いでいく

町一番の美しい男がいた 彼女は彼に尽くした
身を粉にして働いた お金は全て彼に渡した 彼の望みは
何でも叶えた。ある日女は彼の商売仇を殺した
彼が「あいつが死んだら商売も上手くいくなあ、死んで欲しいもんだ」
そうつぶやいたのを聞き逃しはしなかった

彼女は逮捕されても彼のことは何も言わなかった しあわせだった
彼のために死ねるなんて何てうれしいことだろう!
しかし彼女は死刑を免れた 何年も囚人として務め
ある日町へ戻ると彼は消えていた さよならの言葉さえなかった

彼女が次に恋したのは平凡な男だった
彼には奥さんがいたけれど、彼女にはその男しか目に入らなかった
ある日男はいった「お前は本当にいい女だ 女房子供がいなければ
お前と一緒になっていただろうなあ」 彼女は男の妻子を殺めた

きっと彼は笑ってくれるだろう 手を広げて云うだろう
「愛しているよ 一緒に暮らそう」

けれど男は云った「お前は悪魔だ 私の子どもを返せ!
私の命だったんだ!お前なんて死んでしまえ!死んで地獄に落ちろ!」
彼女は死刑になった
その瞬間彼女は笑った「うれしいわ あの人は私に死ねといったから。
あの人との言うとおりに出来た!あの人の為に死ねる!愛する人の為に
死ねる!あなた!愛してるわ!」

***********

悠久の時が流れ ひとりの女が窓際でぼんやりと景色を眺めている
その女は富豪の家に生まれ何一つ不自由せず美しく育った
彼女は冨も名誉も知性もあった
多くの男たちが求婚してきた それでも彼女は涼しげな目で男たちを見て
微笑むだけであった。彼女の美しい肉体はまだ誰のものでもなく
聖なる城の扉は閉ざされていた

清い身体で愛する男の元へ行きたい そう彼女は考えていた
自分の性は世界でただひとりの 自分の夫となる男のためだけに
開かれるべきだと・・・

それは ひとりの男の為にという一途な思いなのか?
無邪気な少女を内包している故なのか?
それとも結婚という通過儀礼をより高い世界への踏み台として
男を踏み台にする足がかりなのか? わからない 彼女もわからない
誰も・・・わかりはしない 本当の事とはいつも深い深淵の底なのだ

彼女は一人の男の為に狂気に走る事は無いだろう
彼女は両親への愛を知っている 隣人への愛を知っている
友愛を知っている それ故に世間の正しき道も知っている

暖かい愛を知る事はできる・・・だが彼女は燃えさかる炎のような
愛は知る事は無いだろうし知りたくは無いのだ

彼女の部屋のカーテンが風に揺れた
山々は緑に満ち溢れていた・・・・・・・・

************

私に必要なものは何だったのか?ユニコーンはまた思う
思い出せそうで思い出せない ムズカシイのだ
それに何故そんな事を考えるのだ?

ユニコーンは求めている たったひとりの処女を。
生贄か恋人か それとも・・・・・それは何なのか
神にしかわからない事だが・・・幻のような3人の女たち
ユニコーンが何故女たちの幻を見たのだろう?
神の悪戯にユニコーンは苦笑した 静かな闇がまたやってきていた・・・

↑むりやりなお話ですが
中3、高1の間の春休みの作品です
過渡期でしてバージニティーというものについて
真剣に取り組んだ のでした
時代も動いていたんですね
女も社会に出始め
その前には女性絡みの社会運動などもありましたから
価値観の変化は当然閉鎖されていた性の話にも波及して
15歳の私は思いました
バージニティーとは?
体の問題なのか?心の問題なのか?と。
ちなみにクソまじめな中学時代
(学校もまじめな時代だった)でした
んでも・・・高校はヤンキーな公立で 笑

バージニティーとは?今も結論は出ませんが
心が基本だけど
体は心と密接にリンクしている・・・ってトコかな

私たちは何に絶望しているのだろう
私たちは何に怒っているんだろう
私たちは何に反抗しているんだろう

タバコや酒が何をしてくれるんだろう
答えが見つかるわけじゃない
自分の殻を汚す事でいったい何が見出せるんだろう?
大人は大きらいだ
でも嫌いと連呼するだけの私たちももっと嫌いだ

大人がハイエナの集まりだというのなら
私たちは? 私たちはきっと・・・・・・・

*************************

うーん。何を書きたかったのか「大人がハイエナ」はわかるとして
私たちは・・・の所を当時の私が何だと考えていたのか
知りたいのですが(笑 私がわからなきゃあなたもわかりませんね)
ハゲタカとか考えたけどちがう・・・うーんもっと非力なモノだと
思うんです。ボウフラ?(笑)ちなみにムスコはこれを見て
「ボクは犬だと思う」だそうです。私の第2:うじ虫 第3:カラス
なんで害虫ばっかり(笑)16歳 高校ですね。ヤンキーな学校でしたのでマジメな私でも
まあ酒くらいは・・・笑 今ならさしずめコギャルファッションに
なっていたんでしょうか?あっはっはヤンキーもコギャルも勘弁して。

(これまた長いぞ)

1978年 17歳 黒の創世記 エゴの原点

それは・・・いつやって来たか わからない

ある日の事。私が目覚めると 頭の中で何かが言った
「オハヨウ」
そして少しづつだが それは確実に成長していった

あんた どこから来たの?」私が聞くとそれは答えた
「君と同じ所から」
私の内部(なか)で私以外の知性が生息している
それは 自分が一つの小宇宙だと自覚しただけで
何ら恐怖も不安も無かった
私は心から楽しんでいた。自分の中の客人と
その器である自分の精神を・・・

ある日そいつが言った「君はカミサマなんだね」
私はそいつの様子がおかしいと思った。苛立っている 
「ボクは不安でたまらない」そいつは言う
「君は不安じゃないの?」私は黙って聞いている
本当はそいつの言葉の一つ一つに快楽を感じていた
私の中の不安の部分は彼が持っていった そんな気がした
「君は カミサマなんだ」そいつがまた そう言った
「ボクは君と同じ所から来たけれど 向う所は違うんだ」
「ボクは君がそう望めば消えてしまう存在なんだ」

彼は私 私の作った 私の望んだ幻
けれど 幻であっても彼は彼 私の中の異界の人
私は彼が必要で 彼は誕生した それなのに何故彼は
不安と言うの?私は彼を放しはしない 存在を望み続ける

彼は続ける
「知っている?愛すると言う事を」私はゆっくり口を開く
「知ってるよ」彼は冷たい感じで笑みを浮かべこう答えた
「いいや 君は知らない。君は自分しか見ていない
君の宇宙には自分しか住まわせないんだ だから・・・
ボクは知っている 君がボクに飽きてボクはいなかったという
存在になる事を。君は自分だけを愛している」
私は怒りに震えた 愛?アイ?
そんな物私には 私の宇宙には要らない
だけど 私は彼を 彼と言う存在を受け入れたじゃないの!
それなのに私に言うの?愛を知らないと?

私は怒りに任せ言った「あんた何か知らない!」

私の中で彼の存在感が薄くなる 消えてゆこうとする彼
急に襲う不安 私は叫ぶ「行かないで!」

彼は微笑む そして言う「うたを教えてよ」
私は答える「忘れちゃった うたうと言う事も うたも」
越えた・・・越えてしまった私はとても悲しかった
いつからそうなったのか どこを越えたのか
それすらもわからないのに
越えてしまった自分が悲しかった

彼は最期の言葉を言った
「君はボクをエサに太ってゆく豚だよ 君は自分が宇宙だと
思っている。どうしてそう思うかわかるかい?ボクだ
ボクが君の従者でいるからさ。ボクがこうして君の中に
いるならそれだけで君がカミサマになっているんだ
ボクはなに? ボクは君のただの付属品なんだ」
言葉は鋭いのに私の心を傷つけはしなかった
彼が私を「愛している」のを感じたから

私は初めて彼の悲しみも知った
生まれた時から彼は いやそれ以前に 運命から与えられた
従者と言う鎖を解く事はなかった
私が勝手に望んだ「存在」 私が勝手に消す「存在」
私は彼の存在で優越感にひたり そして不安を消していた
私は泣いた いや 泣いたんだと思う
自分の愚かさを悔やんだわけではないでも・・・・・泣いた
サヨナラ 彼はいない もう いない

彼は私 私だった 私の「不安」だった
私は人を愛する事は まだできない
でも自分を愛する事は知った
人を愛したい。自分と違う世界で 血を流しても。
人を愛する事ができるだろうか?未熟な私でも・・・
でも・・・きっと出来る
だって自分を愛せない者に人を愛せるはずが無いのだから

何故「あいつ」がやって来たのか
私がそう望んだのはなぜか 答えは見つかるだろう
たぶん私が人を愛したいと願っているから
そして・・・いつか誰かを愛した時その人に見るだろう
「あいつ」の幻を・・・・・・

*********************************************これは文芸部の文集用に書いたのですが、あまりにも
前向きなエンディングに当時の私は反発して(自分に反発 笑)
文集バージョンは全然違う悲惨な中味でした
設定も言葉も違うしエンディングは「愛は要らない ムダ」と
切っちゃうんだなこれが(笑)多重人格と言う概念がまだ浸透
していなくてそういう意味でなく、心の葛藤劇として書き
文章は稚拙であるけれど部員の反応も賛否あったし
印象的な作品でした。長くてごめんなさい
暖かい文章に触れ、前向きもけっこういいなあと思った次第です
(やっぱネットはサイコーっす!そこのあなた!せっせと!)

1978年 17歳

ドッペルゲンガー

そこに一つの幻を見る もうひとりの私 もうひとりの自我
身体を 大地を 空間さえも 突き抜けてゆく
放射状のそれは あるものには生気を与え あるものには絶望を
あるものには死を そして異界へ消えてゆく

あれは何 あれは命 あれは心 あれは涙 あれは怒り
いいえ、あれは悲しい幽霊
この世のどこにも存在しないもの 概念さえもない
悲しいか? 淋しいか?とたずねてごらん
きっとそれはこう答える・・・

「いいや、私は悲しくない 淋しくも無い
何故なら 私は存在しないものだから・・・
この幻の世界や幻のあなたと同じように・・・・」

************************************************

私の高校の教科書で唯一残っている「倫理・社会」の中から
出てきた1枚のメモだ。ドイツ観念論のページだった
何でやねん?見ると一本のアンダーラインがあったカントの 自律としての自由こそ真の自由であり
     こうした自由を離れて道徳行為は成り立たない
の一文だった。自分が残したアンダーラインをたどると面白い
私は試験に出るから、なんて理由でラインは引かない
興味ある部分だけ自分勝手に引く(数学など苦手科目は別 笑)
だからその時の自分の思想が写真のように残る・・・・
(もちろん4時間目らしく 腹減った何ていうのも書いてある)

1978年 (17歳)

若いって事はどんなことだろう
その真中にいるっていうのに よくわからない
ある人は言う 若いって事はいい
過ぎてからそういうのは 妬みだろうか?

明日があることに対してのシットだろうか?
それとも・・・
あわれみだろうか?
明日道が崩れるかもしれない事への・・・

人にはきっと資質があるんだろう
それは俗に天性とかいうモノで 生まれる時に
祖先から引き継いだ動かしがたい現実

私の「それ」は?私の好ましい「明日」は?

答 それがわかるなら迷う事はない
それは充分わかっていると思っていたのに
私は求める たったひとつの答えを(妬みって面白い
だって もしかしたら すごく必要な感情かもしれないもの
だって 妬むっていう感情は
その人を随分と高めてくれそうなんだもの

早く!と誰かが言う
速く!とまた誰かが言う

そうか それはあたし あたしの声だ
そう気付いて 驚く
私がいっぱい・・・

時間がない ううんちがうよ
時間はある でも あ・た・しのいられる時間がない
そう それなら正解だからたくさんの私がこうして出来てしまい
何かしろ!とささやく
なのに 私は動けない あたしは動けない
この場所から移ったら どうなってしまうかわからない
その恐怖があたしを縛っている
それを私はじっと見ている

黒が好き
控えめできれいだから
黒が好き とても好き

夢を見た
自分の弔いのユメを・・・
氷の棺に横たわった自分を
色々な人が見下ろしている
みんな同じ顔をして 同じ言葉を言う
「かわいそうに」
塗り込められた魂は 
そのまま 一緒に固まってしまうのだ

自分をコントロールできない私
それはとてもはがゆい事だけど
内心とても喜んでいる
そう 私は
わたしにも コントロールされない自分を
とっても喜んでいる

2001年39歳 現在これを↑読むと・・・

十代は考える事がたくさんあった気がする
それは今の自分の何十倍、何百倍なのか
見当もつかないが
考える事イコール生きる事であった
今の自分は?いや、変わったんじゃない
キカイの性能が落ちただけだ
スピードや容量が減っただけで
中味はなにも変わっていない

変わりたくないので
そう希望しているだけかもしれないが
良い方向へ 良き自分へ
変えてやると神が言っても
私はきっと断ることだろう
悪しき自分 自分の闇
失敗ばかりの間抜けな自分
全てが自分そのものだから・・・

でも人の色は単色でなく
色々な色が混ざり合う混色である
その色彩や透明度 濃淡などなど
同じカラーはない

自分の色を大事にしよう
世間にもまれても
褪せる事がないように・・・

アクマっていうのは
とても刹那的でうつくしい と 思う
すべてものごとを 利己的に処理するって
ナカナカむずかしいことだからアクマっていうのは みなが言うほど
悪い奴ではないと 思う
少なくとも 私よりは・・・・・・

白い仔猫    淋しい人への童話

(1978年 17歳)

アッちゃんはいつも思っていました「猫になりたいなあ」
アッちゃんはおばさんの家に住んでいて、おばさんは
亡くなったアッちゃんのパパとママの代わりなのです
おばさんはとても大切にしてくれました
暖かい部屋、おいしい食べ物・・・でもアッちゃんの心は
いつも淋しさでいっぱいでした

なぜかというと、おばさんはひとりぼっちになってしまった
アッちゃんを傷つけないようにとアッちゃんを壊れ物のように
扱って、決して心をぶつけてこようとしなかったからです
おばさんは、そんなあっちゃんの気持ちを知りませんでした
だからいつも淋しそうなアッちゃんを見てよけいに気を
使っていたのです。本当は怒ったり抱きしめたり、ママのように
して欲しかったのに・・・

すれ違いはふたりから笑顔を取り上げてしまいました。

だからアッちゃんは思っていました
「猫になりたいなあ」
猫ずきのおばさんはたくさんの拾った猫を飼っていて
家はそんな猫たちでいっぱいでした
おばさんは猫たちには、頬ずりしたりひざに乗せたり
また、イタズラするとお仕置きしたりします
アッちゃんはそんなふうに、おばさんが心を開いて接する
猫たちがうらやましくてたまりませんでした
アッちゃんは夜ベッドに入る前に神様にお祈りをしました
「一番かわいい猫にして下さい」

アッちゃんとおばさんはすれ違ったまま、月日が流れていきました
アッちゃんはおばさんの背を追いこし、おばさんはそんな
アッちゃんと反対に年を取り、いつしか頭に白いものが混じるように
なりました。おばさんは少しづつ体が弱くなり
とうとう寝たきりになってしまいました

日増しに弱ってゆくおばさんに、アッちゃんは何もしてあげられず
おばさんが早くよくなるように、と祈るばかりでした
しかし、アッちゃんの気持ちとはうらはらに、おばさんの具合は
悪化してゆきました

「アッちゃん」苦しそうな息の下からおばさんはアッちゃんを
呼びました。そしてアッちゃんの手を取ると言いました
「アッちゃん・・・ごめんね」
おばさんは静かに目を閉じました。もう目を覚ますことはないのです

ごめんね・・・そう言ったおばさんは、最期まですれ違った自分と
おばさんの心を思うと悲しくてたまりませんでした
本当はふたりとも、とっても好きだったはずなのに・・・

アッちゃんの目から涙がこぼれ、床に小さな水溜りを作りました

パパとママがそうしたように抱きしめて欲しかったのに
甘えたかったのに、それも出来ないままどうして逝ってしまったの?
アッちゃんは心の中で言いました
そして、おばさんの横にひざまずき、ぽつんと言いました
小さい頃言ったのと同じように・・・
「一番かわいい猫にして下さい」

窓から見える空はとても高く、秋が深いのがよくわかります
風の吹き過ぎてゆく小さな部屋には、静かに横たわるおばさんと
おばさんの枕元で鳴いている白い仔猫だけで
アッちゃんの姿はどこにもありませんでした  Fin

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高校の文化祭の文集用に作ったものですが、実はある同級生が
養女だとわかって、悩んでいたというエピソードから
彼女の発案で書いたもののでした

1978年 17歳

生きる事を恐れて死を選ぶよりも
生きる事に潰されながらも、なお生にこだわる人が強い人
私の名を呼ぶ それは誰?
母でもなく、友でもなく、遠い霧の中からかすかに聞こえる声
いつか私は知るだろう その人の事を
そして私は生き続ける 生を恐れながらも 生の意味を探しながら

木霊

深い山の中で私が言う「私はだあれ?」
それは答える「お前は私 私はおまえ」
私が 世界に満ちている
世界に 私だけがいる 私がいる 私たちがいる

ならば世界は きっと 何の意味もない

人を求めてさまよう魂が 行きつく所は 遥かな孤独の街

だから私は木霊はきらい
人が生まれて死んでいく それはいつも孤独な事だと
教えるのだから・・・

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信じようか? 人を
信じようか? 自分を
それとも 何も信じないで 全てを捨てて ウソだけで
生きてゆこうか?

何が恐い? 何が怖い? 何がコワイ?
そう傷つくのが恐い 人の痛みが 私にも痛いのは
やさしいせいじゃない 私はやさしくなんかない
でも・・・・・やさしさの仮面を取って 自分を信じて
人も信じて その一歩が恐い

↑17歳 いやー、去年か(笑)これは今でもわかる気がします
自分の中で一進一退を繰り返すような場面で
自分をどこまで信じていけるか、他人をどこまで信じられるか
常に判断は難しいと思うから・・・

一番最初の文は、男を待っていると言う事ではないですよ(笑)
それは神とか運命とか、自己探求だと思います
って自分で書いたのにうん十年も経つと怪しいけど(笑)

高校二年

時々、自分が存在している所を、確かめたくなる

この空間のどこかに、自分の魂があるのだと

叫んでやまない、人形のようないま、

それを求めて、限り無い時間の中を、漂い続ける

無力さを認めることは

自己を信用できない事だと、わかっている。

それなのに、心のどこかでは、言い続けているのだ

わたしには何も出来ないと。

お父さんに会った
オトウサン?

わたしが彼をそう呼ぶのが不思議
そう呼べるのが不思議
ぎこちない会話
父子の会話ってこんなにも事務的なのかしら
ねえ,オトウサン

わたしは父の子 父の子
目も 額も 鼻も
あんなに大好きな母から譲られたものではなく
わたしが生涯恨むべき人の物なのだ

今日ほど自分を引き裂いてやりたいと
思ったことはない

泣いて,泣いて,忘れてしまいたいと思っても出来ないの
私は素直じゃないから

「強情な子!」
「誰に似たんだか!」
幼い頃私に浴びせられた言葉
「親(母親)に見せたいよ,このふくれっつら!」
私を憎んだのはあの人は父を愛していたからでしょう
父にそっくりな私の顔が
憎かったはず

死にたかったけど死ねなかった
私には泣いてくれる人がいる
母が,友が,きっと泣いてくれる.
いつもそう思って,笑ってきた.
死なないと,決めた.
泣かないとも,決めた.

いつだって泣けなかった.
思いっきり泣いて涙と一緒に流せたらどんなにいいか.

あの時も,あの時も,私は泣けはしなかった・・・

自分自身を 他の圧力によって
変えてしまうくらいなら私は死を選ぶだろう

決して人間は力を恐れてはいけない
決して人間は力に屈してはいけない
力に抵抗する勇気こそ 人間の真の姿だと
信じたい

だから決して 私は負けはしない
自分の世界は他人から不可侵であるべきだ
他の力によって変えられる事のない強い自我を
私は形成っていきたい。

私が生きている事は,人々にとって善なのか悪なのか?
死にたいと考えるのは悪だと思うし
(キリスト教の教えからではないよ)
生きたいと願うのも悪だと言う・・・

ならば,私はこれからどうすれば良いだろう

死ぬ事は出来ないし,生きる事は尚むずかしい
生霊のように正体なくさまようだけが私の全て?

神は私に何をしてくれただろう?
何も・・・何もしてくれなかっただろう!
私にとって神とは,生をくれた,それだけの事だ.

自分の生の意味を決めるのは自分
神でなく,親でなく,ましてや他人でなく
生きている自分自身

夜中が好きだ.
音が聴きたくなる
ホテル・カリフォルニア
ラジオの受信がなんだか「すねてる」
レコードは,貸しちゃった・・・

字が書きたくなる
お元気ですか?誰にでもなく手紙を書いて,捨てた

Rと大ゲンカした
また宗教戦争勃発だ
彼女の言う神の存在の証し,が私には遠い.
火星にタコ型宇宙人がいるのと同じ理屈じゃないかと
言った言葉がいけなかった
運命は神のご意志だといったのもまた
私のカンに触って大爆発

彼女と話すのは大好きだ
得がたい友だけど,ケンカになるのは玉に傷.
「あなたが神を認めてくれたら,もっと好きになるんだけど」
そう笑った.
「その言葉はそっくり返す」私もいった.
でも私は知っている
私の中に神はいないし,彼女の神は死ぬ事はない
だからこそ,つながる友情もある

悲しいことしか考えられない人が嫌い
泣くことしか出来ない人が嫌い
人を憎む事しか出来ない人が嫌い

胸の中の苦しみを
いつも笑って隠している
ヒマワリのような人が好き

わたしはどう?
まだまだだよね、がんばりなさい
ヒマワリがそういった

大人になる前にやっておくべき事
どうしよう,何をしよう?
私は,こうして,このままの大人になってしまうに違いない
そうして,何の成長もしないまま
まだ,うろうろしている心の迷子

(注:なんか当たってます
そのとうりの大人になってます.笑)

全ての人間達へ
目を閉じろ!
耳をふさげ!
本当は人間が入ってはいけなかったのだ
こんな邪悪な世界には

警告としての序章

そして茶番は始まった
私の内なる野望を映して
「生きていく事なんてルーレットみたいなものさ
かなうかどうか、わからない望みに,自分を賭けて」
私はそのルーレットの為なら死んだってかまわない
そう思って進んできたはずなのに
今,私は,安い居酒屋のステージで
茶番劇を演じている
「なぜこんなに迷っているんだろう」
「私は今どこにいるんだろう」
そして茶番劇は続いていく

私の内なる野望を映して

エンド・マーク

もう終わりだと思って
全てにエンド・マークを打った
自分自身の迷いに,エンドマークを打った。
でも,私の夢が果てしないように
迷いにも終わりはないのだ
そう考えた時に
私は幻のエンド・マークを見た。

人間の定義

生まれたばかりのホモ・サピエンスはいわゆる人間で
時を経て社会へ出ると
極度の利潤目的だけのコンピュータ的生物となる
感情があるところだけ機械と異なる
(全てその感情は欲望から来る)
ひとりひとり,人間として生まれたはずなのに
いつのまにか社会という強大な機械の中の
一部品に過ぎなくなってしまうのだ

狼に育てられた少女
彼女が一番純粋な,人間らしい人間であり
言語を操り,洋服を着て,道をゆきかう生物の方が
はるかに動物的である。
何故動物的か・・・欲望のみがこころにあるから
なぜ機械的か・・・利潤の為なら全てを殺せるから

以上はわたし独自の性善説である
ちょっと前に読んだ「狼に育てられた少女は人間といえない」
という記事に対しての反論である。
人間とは何かも永久にわかりはしないのに
そんなに安易に結論を出すべきではない。
例え神がいたとしても
人間の定義などして欲しくはない

人間がなんであるかということは
きっと、人間が滅びてしまった後でないとわからないのだ

最近になって,時の速さに気がついた。
時計が,実はこまのように
めまぐるしく回っているということも・・・
太陽が空をひとまわりしていくことも・・・
(微速度写真のよう)
無駄に流れた時間の多さと
多いと思いこんでいた未来の日々も
きっと,ちょっとの間に過ぎていくのだろう

何も聞こえて来ない暗い壁の向こうで
何かの気配を感じ取っていた
五感を超えて,わたしの内部に直接感じるものがある
目を開ける必要もなく
耳をすます必要もない
手で触れて物を確かめるのと同じように
こころで存在を確かめられるのだ

人間は本来そのように生まれついた。
母親の体内でねむりながらも
外の世界がどんなものか手に取るようにわかった
赤ん坊の泣き声はなぜかというと
この世がどんなものか知っているので
この世に生まれてしまった事を悔やんで,泣いているのだ

芥川竜之介「河童」
河童は生まれたくないといって消えた。
人間は生まれてしまった河童だ

人間がないものねだりなのは
退化してしまった6番目の能力に,たよることが出来ないので
この世で生きる事が不安なのだ

かなりセンチメンタルな気持ち
今,ジクソーパズルは大混乱
なかなか形がサマにならない
みにくくぼやける未来像
色々な夢は持っているけど,現実の重みで船は進まない

*************

重すぎた箱舟  盗作

もうすぐ嵐が来て何もかも沈んでしまうぞ
そう言って,神サマは,箱舟を造りました

この船は軽い者たちしか乗る事はできない
重いものが乗ったら沈んでしまうぞ

しかし,軽い「夢」という生き物たちが
船に乗る前に,
重い「現実」たちは,こっそり船に乗りこんでいたのでした

しばらくして洪水が起こり
夢たちはどこかへ流され
現実たちは自分の重みで沈んでしまいました

この世には,だあれもいなくなり
楽園と呼ばれる地になりました

地平線の彼方(1978年 17歳)

少女はいつも思っていた
この大地の向こうには何があるんだろう?と

ある日少女は歩き始めた
地の果てに向って
山を越え 棘の道では傷を負い 血を流した
もう少し もう少し・・・もう少し・・・

野原で夜を過ごした少女に 声をかけたのは
蛇だった
「どこまで行くんだい?」
黒い皮のつややかさの中に 銀色が光っている
それは月の光で青くもなり なんて美しいんだろうと
少女は思った。少女は蛇に見とれつつ、静かに答える
「大地の終わる所に行くの。そこはどんな風か知りたいの」
蛇は頷く。その瞳にはどこまでも深い黒と白く輝く月が映っていた
「気をつけて。行っておいで」

夜が明けた
少女はまた歩き始めた
地の果ては近づいてきた やがてそこに彼女は立った
地の果て・・・そこは光り輝く世界だった
甘い香りと 咲き乱れる花園

ふと振りかえると昨夜別れた蛇がいた
「美しい所なのね ここで暮らせたらきっと幸せでしょうね」
少女が言うと 蛇は答えた
「そうだね。ここは幸せの場所なんだから」
少女は蛇と、ここに住んでも良いなと思った
蛇はそんな少女の気持ちを察したかのように言った
「私はね 光溢れる所には住めないんだよ
しあわせ溢れるこの世界には・・・」
「なぜ?一緒に幸せに暮らしましょうよ」

蛇は静かに微笑むと言った
「私のいる所は 暗闇の湿った大地の隙間なんだ
そこでは光も差さないし、食べ物が無くて飢えそうな時もある
他の生き物を殺して食べるし、反対に食べられそうな日もある」
少女は黙っていた 蛇は話を続けた その声は霧雨のようだった

「それでも 私はそこで生まれ 暮らす そして
死んでいく そのあとは・・・」
「そのあとは?」
「私はいなかった この世界のどこにも それだけだ
でも 私はその暗い世界に生きた 暗い大地はあり続ける
私がこの世から消えてもね
だから私は行けないよ 幸せな場所には」

去ってゆく蛇に別れを告げた少女は 一歩足を踏み出した
その方向は 幸せの国への道でなく 家路をたどるのでもなく
まだ彼女の知らないどこかへの道であった

「私も探そう 私の居場所を」

蛇は力尽きて家路の途中に倒れていた
蛇の体は野鳥についばまれ やがて腐り始めた
大地は彼の血肉を吸った そうして大地は生き続ける
生きると言う事 死ぬと言う事 全てが真実であったと
蛇の亡骸は語る それはこの世の誰よりも雄弁であった・・・

気持ち悪いとか、蛇が好きなの?とか当時言われまくりまして
共感者がほとんどいなかったというボツ作品ですが
私個人は非常に気に入っていたものです
運命を受け入れる事 運命を切り開く事
その選択さえも 人はできると思っています

何の心配もない幸福というものを 今受け入れても
それは自分の「本当」ではない・・・そう思います

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