作品 40代から(これから・・・って事で)

    手を伸ばしても、誰にも届かない
    声が枯れるほど叫んでも、誰も答えない

    私の瞳は確かに彼らを捉えているのに
    私自身は彼らの瞳には決して映りはしないのだ

    誰も私を見ない、知らない、私はどこにもいない

    人は皆ひとりだという
    生まれて来る時も、死ぬ時も、生きている間ずっと。

    でもそこでは皆、幻を見る
    見ることが出来る
    そうして、ひとりじゃないのだと安心して歩いていく

    その幻を見ることが出来ない人間は辛さに耐えられず
    生きてはいけない

    人生は幻
    人生は夢
    人生は・・・死に向って歩く道

    人は神様の作った影法師
    でも神様の歩くようについてはゆけぬ
    不器用な影

    そんなものに作った貴方を
    人はなぜ畏れ、敬い、愛するのか
    それは親を慕うかのような絶対の感情で
    人々をとらえ続ける
    人は貴方に魅入られた奴隷に過ぎない

    それに気がついたとしても
    私たちは決して逃げられはしないのだ

    そうして絶対的な孤独な死への道のりを
    今日も歩き続ける

    2008/6/28


    降り止まぬ雨
    町がモノトーンに沈む中で
    裸足で歩く自分を見る
    どこへゆくのか
    どこから来たのか
    でも
    誰も振りかえらない

    アスファルトを満たす雨に
    つま先は凍りついても
    立ち止まりはしない

    どこかへ行かなければならないから
    誰かから逃げなければならないから
    でも・・・
    誰も私を見ない
    誰も追ってなどこない

    そうしてモノトーンの町に溶けて
    いつしか影になる
    人々の記憶にも残らない影になる

    私は雨の冷たさを記憶に残そう
    それは冷たく美しい光景だったと・・・

    2002/12/4


    2002・4・25

    雨が降っていた
    欧州の雨は霧雨で傘が無くても大丈夫なほどの
    霧雨が多いのだと聞いたことがある
    日本の雨はスコールのようね
    と昔誰かが言った
    そんな事を雨を見ながらぼんやりと思った
    日本の雨は怒っているかのようだと
    私も思ったことがある
    梅雨は雨季・・・亜熱帯を感じながらの、雨

    今日は「おとなしい」雨だ
    傘を外してみると顔に湿り気が移る
    雨を感じながら人の言葉を真似する
    「日本の雨はスコールのようね」
    私が今まで受け取ってきた様々な言葉
    人の語った事の記憶が、浮遊しているかのように
    浮かんでは消えていく

    こんなことを言った人もいた
    人と最後に会う時に何というか・・・という問い
    それは死別でも生別でも、あらゆる人を指すのか
    または一人一人になのか、忘れてしまったが
    「さようなら」は別れを認める言葉で
    「いつか」は希望(再会の。本当は無くても)の言葉
    他には?どんな言葉を伝えようか・・・

    今ふと思う
    最後の言葉なら「ありがとう」だと・・・
    人に伝えるならこれに勝る言葉は無いと・・・

    「日本の雨はスコールのようね」
    木霊のように・・・またつぶやく
    自分の言葉をそっと口に出す
    「ありがとう」
    「ありがとう」

    そうして誰かの言葉が誰かの記憶に残ってゆく事
    それは悲しいと思う
    それをやさしいと思う

    人の暖かさを思う
    春の寒雨に惑わされて・・・・・・・・・

    ****************

    決して多くを語らなかった人が
    多くのものを残していったり
    時間を忘れて語り合った人に
    何か「忘れ物」をしたような感覚を持ったり
    何気ない言葉が心に残ったり
    誰かの生き方を変えたりもする
    言葉は不思議
    言葉は生きている
    そんな風に自分の発した言葉が
    誰かを揺さぶることもまたあるのかと
    こわくもあるし
    神聖な気持ちにもなる


    光あれ 神は言われた
    そしてこの世に光が差し 光ゆえの闇が生まれた

    人は光りを 純白を 美しいという
    なぜ?
    黒の存在あってこその美なのに
    闇の存在あっての光りなのに

    神を愛し 人を愛し 生きる者
    それでも憎しみは消えぬ
    それは
    神が人を 憎んで 愛しているから・・・・

    「私のいとし子よ 泥にまみれて 生きよ」

    *****************************************

    こんなにも誰かを待っていた
    扉を開けてくれますか?
    扉を開ける力をくれますか?
    扉を開ける事は無いよと言ってくれますか?

    そんな問いに答えをくれる誰かを
    待ちつづけた

    誰もいない
    誰もいない
    そして足音は過ぎてゆく

    誰かを待って,誰かが近づくと
    私は透明になる
    気づかれづその人は通り過ぎていく

    人生はそんな事の繰り返し

    扉は重いか?私に力はあるか?
    扉なんてどうだっていいのか?
    答えを知っているのは自分なのに
    いつだって答えは人に言って欲しいのだ

    間違っていたとしても・・・・

    2001/2/20

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