読書かんそうぶん フィクション(小説など)
国境 黒川博行 講談社文庫
建設コンサルタントの二宮と暴力団の桑原は
詐欺にあい、逃亡した男を追って北朝鮮に潜入する
ヤクザ系のハードボイルド?だが、前半の北朝鮮に潜入した時の
状況は,最近報道されているような北朝鮮の様子が描かれている
しかし。北朝鮮というキーワードに惹かれて買った本だが
意外にも面白かったのはヤクザとコンサルティング業の二宮の
二人の掛け合いだ。絶対に組みたくない相手なのに
なぜか、組む羽目になる
そんなふたりの憎まれ口はサイコウである
余談だが,面白いし気を使わないで読める本なので知人に貸した、が
彼女は「ねえ、悪いけどシュミじゃない。ヤクザものなんてつまらない
あなた,変わってるね。」と笑われた
うーん、そうかも。実は逆に,以前彼女から本を借りた折
全然読めなかった事があった(恋愛モノ)進まないのである・・・眠くなって
たぶん彼女の方がマトモだろう
会社でキティちゃんの弁当箱の話題が出た時も
ブランドのバッグの激安セールの話題の時も
大枚はたいて買ったという指輪を見せてもらった時も
痩せる下着(値段が高い)の体験談を聞いた時も・・・
実は私は眠くて死にそうだった(苦笑)
ヤクザや自衛隊や世界の紛争の話のほうが面白い
という私の思考回路はやっぱり、ヘン
なんでだろー?幼児体験で悪いことでもあったのかな? 笑
2004/9/10
歩兵の本領 浅田次郎 講談社文庫
浅田氏は昔自衛官だったというが、そんなちょっと前の自衛隊の雰囲気を
味わえる自衛隊の青春モノである
始めのページにこんな一文がある
要するに、給料は法外に安く,環境はこのうえなく劣悪で、
仕事は危険きわまりなく、おまけによその国の軍隊とはちがって
名誉も誇りもなかった
なるほど。日本における自衛隊の立場は難しい
我々は国を守る軍隊であると胸を張れない辛さ・・・
(私は自衛隊は軍隊であると思っているが)ジレンマとトラウマの軍隊だ
さて。難しい理屈は抜きに本文を読み進むと
若者が,人生の帰路に立ち,それぞれの事情で入隊していく様子や
入隊後の厳しさに閉口する様子が「普通の若者」の目線で描かれている
どこの軍隊にもつきものの上官の体罰(暴力)さえ
なんとなくサワヤカに(笑)感じるのは氏の表現力のうまさだろう
満期除隊を迎える隊員を何とか引きとめようとする巻末の話も印象的だし
若者が勧誘で入隊する話も載っているが、それが
悪徳商法や悪徳宗教の「甘い」勧誘のように描かれ
入隊したら勧誘の言葉と内容が全然違っていた・・・という落胆ぶりも
笑いを誘うが・・・うーん,矛盾するけど
私も若かったらこの本を読んで自衛官になりたくなったかも
暴力や罵詈雑言の飛び交う世界の爽やかさ?ストレートさ、が
一般社会の(会社にしても地域やその他の人間関係しても)
柔らかな傷つけ合いよりも、気持ちいい気がしたのだが。
今は氏が籍を置いていた時代とは自衛隊も雰囲気やその他色々
違っている事だろうが、軍隊と言う職に就いている若者は今もいて
がんばっていると言う事実は同じだ・・・
※色々な国の軍の体罰や暴力が今では人権問題となるのだが
軍隊とは戦う集団で,戦地では殺しあう集団である
小学校ではあるまいし体罰を問題視していたら
その軍隊が弱体化するのではないかとふと思った。
中東の軍隊やテロリストの残虐さは,人道上は最悪だが
戦闘には必要なものかもしれない
イラクで米軍やその関係者を容赦なく殺害するテロリスト
殺戮現場や死体を引きまわす忌まわしい映像
非人間的で残酷なあの行動を嬉々としてできる彼らには
人道を第一に、平和を望む我々は勝てないのかもしれない
それならば勝てない方が良い?
いや、仕掛けたなら勝つしかない,負けたら正義はないのだから
2004/9/4
そのケータイはXXで 上甲宣之 宝島文庫
旅行で訪れた山奥の温泉地、そこは怪しい村だった
女子大生しよりと愛子を次々に襲う恐怖の事件
今すぐ脱出しなければ片目、片腕、片脚を奪われ
「生き神」として座敷牢に一生監禁されてしまう!?
頼りの武器はケータイのみ
こんな刺激的なオビで・・・買った(笑)
夏にはぴったりの内容の気がした
ハリウッドの血と絶叫のカラフルさよりも
破れたふすまや薄汚れた畳の方がコワイ(昔のニンゲンですから 笑)
小説はおどろおどろしい村の設定だが,書き方は今風
陰湿になりそうな設定を軽くしている(ウマイ)
流行の温泉旅行・・・行くなら人に知られていない山奥の村なんてイイな
と思っていたがこの小説を読んで
「やっぱ世間ズレした有名温泉にしとこう」と思った(笑)
イマドキの日本にこんな村があるはずはない・・・?
とわかっていても、ふと思う
都会でも田舎でも、その地域には、特色がある
中にはよそから見ると?と思う行事があるかもしれない
世界を例にしても同じ事が言える
読書コーナーなどでしばしば紹介している世界の女性や国民への虐待
(婚前の恋愛は焼き殺す、とか、女性は婚姻前に割礼とか,他)
先進国では犯罪でしかない事が特定の国や地域では
戒律や慣習となっている
国際法よりも重い,守るべきもの・・・
それって、やっぱコワイ
伝統や文化を守るのは良い事だけれど
法や常識は守るという鉄則は欲しい 2004/7/29
症例A 多島斗志之 角川文庫
精神科に入院中の少女亜佐美はその美貌と激しい言動・行動で
周囲を振りまわし、疲れさせていた。その担当医となった榊は
彼女が分裂症でなく境界例ではないかと、思い始める
そんな時臨床心理士の広瀬由紀から、解離性同一障害ではないかと言われ
医学界で疑問視もあるその意見に反発するが・・・
一方、病院と無関係の博物館で、展示物の贋作疑惑が持ちあがる
それは、本筋とどうつながるのか?と思っているうち
ほーっ!そうなのかぁ!と思わせるエンディングへ進む
心理サスペンスと思ったが、色々なものを含んでいて、面白い
解離性同一障害とは、小説や映画で有名になった多重人格の事である
TVなどでも時折多重人格患者とされる人がでたりして
社会で認知されている感があるが、医学界では疑問視の声もあるという
例えば、患者の発作や自己催眠ではないかという説もあったり
何の証拠も無い多重人格ではあるが
目の前で、言葉や態度がころっと変わる瞬間を見たら「ありうる」と思うだろう
女優志願の人に多重人格の演技を数日間できるか、試したら
疲労はしたが、数日なりきったという話がある(真偽はわからない
誰かに以前聞いた話である)犯罪者が刑を逃れる為に多重人格を装う
と言う事は可能かもしれない
でも、一般の患者は?わざと演技する必要はないわけだ
肉体の病気と違って精神の病気は本当は、未知の世界で
肉体の医学の進歩を新幹線とすると、精神医学界はかたつむりのようだ
・・・と何かで読んだ。十年前には無かったクスリが今はある
という医学界にくらべて、精神医学界は100年単位だという。ふーむ
話は本に戻って・・・患者の亜佐美は、感情の起伏が激しかったり
ウソか真実かわからない話を出して人を混乱させる
でも、よく考えると、程度の差はあるが、よくある光景、よくいる人である
職場や学校に一人や二人、そんな人がいないだろうか?
私の仕事の相棒(先輩)も起伏の激しい人である
機嫌が悪いと何日も口を利かなかったり、いきなり(前ぶれなく)怒ったり。
機嫌が良い時はテンションが高くなり話しかけてくる
でも。この1年の彼女は機嫌の悪いサイクルが長くなった気がする
笑顔というのをほとんど見ていない
昔から彼女と接している社員の人達は、彼女の性格だよと言う
すぐふくれるから密かに「フグ子」と仇名をつけたらしい
(もちろん本人には内緒)でも・・・やはり昔より怒りっぽさが
激しくなったようだ
年齢的に更年期の不定愁訴というものかもしれないが
周囲は振りまわされる。ちょっとツライ
彼女にとっても良いことではない気がする
人は誰でも壊れている部分はあるのかもしれない
お互い様・・・がつきあいの基本かもしれない
どこまで、自分ががまんするか
どこまで人にがまんさせるか
その妥協点がちょうど良い時、いい関係を築けるのだろう
2004/7/4
錆びる心 桐野夏生 文春文庫
6編の短編が入っている。心のホラーというか
日常ありそうな光景というか、人とは生活とは、本当はSキング並みの
面白い事ではないかと思わせる
最初の作品は「虫卵の配列」
生物の教師だった瑞恵は劇作家に熱烈なファンレターを送る
それを期に恋愛が始まるが、その恋愛とは常識では考えられないような
形であった・・・短編だからそれ以上書けないよぉ(笑)
彼女は評判の良い教師だった。容姿もかわいい
だが生物への興味というか愛情を熱く説明する部分では
この人ヘン・・・と思わせる
ちょっと変わった人はいる
自分だってヘンだと思うし
最近はヘンだ=個性という意味で普通である事と同じくらい
ヘンである事を売りにする人も多い
だが・・・対人に関しては別だ
どうもこの人と話すと話しがズレるとか
人の話を聞いていないようだとか
素人にはわからない趣味なのに、延々と続いて場が盛り下がるとか
程度の差はあれ、いると思う
自分の心に何を飼っていてもいい
でも、表に出る部分では最低限の協調性は必要
自分の為に・・・ね 2004/6/17
神のふたつの貌(かお) 貫井徳郎 文春文庫
神の声が聞きたい。牧師の息子に生まれ、一途に神の存在を
求める少年・早乙女。彼が歩む神へと至る道は、同時に
おのれの手を血へと染める殺人者への道だった。
(表紙裏の紹介文より)
この作品は単なる神(宗教)に傾倒した狂気のなせる犯罪でなく
神とは、救いとは・・・と考える事と、現実の苦しさとのギャップや
破綻した家族関係(夫婦・親子)に起因するトラウマとその継承
巧みなストーリー展開・・・とミステリーと言い切るには重い本だ
(でも読みやすい。面白い)
作品の前半にしばしば出てくる神への疑問(主人公の疑問である)
神はなぜ人を救わないのか、神は人を見捨てたのか・・・
主人公はそれを自分は福音を感じない、と悩み続ける
(それが殺人の動機でもあるのだが)
それは私が(たぶん信仰を持たない人の多くも)一番問いたい事でもある
何にもしてくれないじゃないか
神がいるならなぜこの世は不幸に満ちているのか(戦争など最たる例)
対する答えは本にも出てくるが信じる事、という
これこそがわたしをいつも激怒させる答えで
意味もなく信じるならば対象は何でも良い
神でなくても良い
自分が信じるものならそれを神と呼べば良い
・・・と言う事になる
では神とは人間自身なのか
笑えるような事ではあるが、何もしてくれない、目に見えない
そんな存在よりは救われる・・・
私の結論:神を信じる、信じない、ではない。私には要らない・・・
一番興味を持っていて一番キライなのがキリスト教といえる(苦笑)
絶対主、という思想は受け入れられないから。
でも聖書というのはファンタジーとして、哲学書(ちょっと偏っているが)
として、気に入っているのだけど
信仰心のない者として何かの信仰に「属している」のが
ちょっとウラヤマシイのかもしれない・・・が
私は首にヒモはついていない、野犬でいる事が好きである
2004/5/21
深紅 野沢尚 講談社文庫
父母と幼い弟2人を殺害された奏子は癒えぬ心の傷を抱えつつ
成長し大学生になる。が加害者にも自分と同年代の娘がいた事を知り
彼女に近づく・・・
ありそうでなかった題材に感心した
いつも私は思っていた。事件が起こり被害者と加害者が生まれる
加害者が裁かれ時が流れても、被害者は癒えるのか?
本当の事件の「はじまり」は事件が法的、社会的に片付いて
その後からではないのか?
その苦しさを書いてくれた一冊。フィクションであっても
(フィクションだからこそ)色々な事を考えさせてくれる
犯罪の多い今の時代、多くの加害者と被害者と家族たちがいるのだ
事件には当事者の他に色々な人々がいる
互いの家族はその一番渦中におかれ、ある意味当事者よりも
激しく、長く苦しい時間を過ごす事となる
人は報復で心を癒されるのか?
例えば、許す事で心の平安は訪れるのか?
それは誰にもわからない
普通の人でも被害者にも加害者にもなる可能性は
高くなった気がする。犯罪は一部の特殊な人々のする事
という概念はもはや通用しない
せめて犯罪のために苦しむ多くの人の気持ちを考える事で
少しでも抑止になったらいいなあ・・・とこの本をすすめるのである
まあ、小説だからドラマティックだけどね、そこがいいわけ
2004/4/12
トランス・トランス・フォーエバー 櫻井まゆ 新風舎
「できることなら不在したい」そんなオビの台詞で衝動買いした
パラパラと電車で中を眺めると最後の短編がタイトルの
「トランス・トランス・フォーエバー」だった
トランスとは、いわゆる「飛んで」しまう精神状態であるが
彼女自身によるあとがきにこんな文章があった
「テクノが、具体的にはトランス状態にマッチする音楽であることは
よく知られている。精神的に疾患を抱えた人、精神病質を持つ人のなかに
テクノを好む人が多い感がある。」
へぇ、なるほど。
テクノをガンガンかけるレイヴと呼ばれるパーティや
ひとりで部屋でヘッドフォン(大きな耳を覆うタイプがよいらしい)で
トリップ(古い言い方)する感覚は、音楽が誘導するのでなく
その種の音楽に惹かれる資質もあるのかも?
音楽は麻薬だし媚薬だ。それは人によってクラシックだったり
ロックだったり演歌だったりするだろうが
言葉でない音というものが直接脳に働きかける刺激・・・
でもテクノは確かにヘンだ
メッセージ性もなくイメージングもできない
何も無い空間にぎっしり音だけ詰まっているような?
18歳で自殺した彼女の親が、死後作品をみつけ
悩める若者に読んで欲しいと出版社に持ち込んだら
その作品のすごさに即出版が決まったらしい
どこがすごいのかは人によるし、私は、すごいと評価はしないが
お金を出して買って損はしていないと思う
作品の素晴らしさよりも作者が死んでしまったという事実が
私の目にすごみを与えている
死にゆく人の主張か?
ダイイングメッセージとしての価値か?
でも
生への無関心、嫌悪こそが、生へのあこがれだったのかもしれない
先日ふと目にした書き込みがあった
死にたいと書いてあった
多くの人がメッセージを送っていた
(親身になっている文章が多かった。ちょっと感動した)
でも生きたいわけではない、という
・・・ならばなぜ発信した?死にたいと?
なぜ人に死の願望をさらした?
著者もそう
なぜ書いた?作品を・・・
人は生きる為に人に叫び
死ぬためにも、人に言葉をかけずにいられないものかもしれない
(数日前、作家の鷺沢萌も自殺したという。
「君はこの国を好きか」は彼女だっけ?あれ印象的だった
悪い意味ではなく、私は作家(芸術家)の自殺は肯定している
常人にはわからない精神の繊細さや深い思考がきっとあって
作品を残す為に生まれて、死ぬかのような・・・
ホラ芥川だって太宰だって・・・サ 2004/4/28
エンジェル エンジェル エンジェル
梨木香歩 新潮文庫
介護の必要な「ばあちゃん」の夜のトイレの付き添いを
母に代わって引き受けた代わりに、念願の熱帯魚を飼う
夜中の孫と祖母の奇妙な語らいが始まった・・・
物語は孫の現在進行の語りと、祖母の少女時代の語りと
交差しつつ進んでいく。祖母の語りの部分は
旧かな使いと昔の文体で、それが逆に新鮮だった
物語の内容はあとがきにあるように全体を崩すとヤボなので
書かないが(雰囲気が半減しないように。これはどんな本も
共通するかもしれない。本を紹介する時は気をつけているが
どうしても読み手の主観が入る。だから本のオビの紹介文が
一番手っ取り早くて、かつ、スマートかもしれない)
なぜか太宰の「斜陽」を思い出した(好き)お嬢様の雰囲気?
内容は書かないが、印象に残る文章はちょっとイイかな(笑)
「コウちゃんは、悪魔にもかわいそうだって言う?」
以下物語とは全然関係ないけど・・・苦笑
善と悪、神と悪魔、白と黒、二元論は好きじゃない
小さい頃、若い頃、二元論は「苦しかった」と思う
自分を責め、他人を責め、社会を責めてしまう心理は
善悪のハッキリした価値観に原因がある
失敗した自分、弱い自分、無力の自分
そんな私を、私の神は責めるのだ
私の罪を、私の悪を・・・すると私は思う
私は天国の門をくぐれない
善悪のボーダーラインが心にあった頃
私は「罪」の重さに苛まれていた
でも。何か違う
私の中のどろどろした(でも熱い)ものはそこで
死ななかった。生き残り、増え
砂漠の熱波に耐える生き物のように「勝った」
最近は思う
生きている事
それだけで人は十分だ
生きぬく
それだけで天国のパスポートはあるはずだ
いや、行けなくったってかまわない
今呼吸しているこの時間この場所が
きっと天国なのだから・・・
ギリシア神話の神々のように、飲んだくれや嫉妬深い神
地獄界に落ちた人も「オメ―何やったんだ」
「生きている時バクチで家庭崩壊しちゃってねえ」
なんてね(ケームショじゃないっつーの 笑)
そういう世界ならオシャレかも?
2004/4/8
黒冷水 羽田圭介 河出書房新社
優秀な兄と兄にコンプレックスを持つ弟
そんな弟は兄の部屋を執拗に物色する
兄もそれを知りつつワナをしかけ(カッターの刃をしこんだり
監視カメラをしかけて。弟が兄の部屋を物色する様子を
両親のいる前でテレビ画面に映し暴露したり
ああ私ってひとりっこで良かった
こんな関係なら兄弟なんて要らんわい、と思わせる場面が続く
弟のストレートな兄への憎悪はわかりやすいが
兄はもっと複雑な心理におかれる
弟を許そうとする気持ち、許す事で自分はそんな人間と違うと
自分でも繕いたい気持ち、でもやはり弟の態度のたびに
怒りが再燃・・・
人間関係はむずかしい
理屈ではわかっていても、人間なかなか寛容になれない
我慢しよう
許してあげよう
理解しよう
理屈ではわかるし、自分のためにも自分を押さえたい
でも、うまくいかないからイライラしたり、落ち込むのだ
(いっそ爆発できるなら楽なのかもしれない・・・でも
多くの人がそうだろうが、なかなか爆発できるものではない)
それと、家族はオープンで秘密が無い
という理想はたぶん幻想だ
特に男性は***コレクションが隠してあるのだろうし(笑)
ケータイなども見ない方がイイ
見るとタマシイを抜かれるかも?
年頃の息子や娘の部屋は、聖域か、黒魔術の館で(爆)
砂漠で迷うと困るから覗かない方が華である
オトーちゃん&ムスコの部屋の掃除はけっこう気を使う
見る気が無くても「ぽろっ」って・・・(^_^;)
さて。この本は最後まで気を抜けない
イマドキのワカモノ(著者17歳)ってすげーな 2004/4/7
オンリーチャイルド ジャック・ケッチャム 訳:有沢義樹
扶桑社ミステリー
冒頭で、泣き止まない赤ん坊に腹を立て便器に突っ込む
若い母親が登場する。その赤ん坊は後に異常な性癖と
暴力的な男に育つ・・・男は結婚し息子も生まれ
子どもを可愛がっていたが・・・ある時息子が奇怪な行動を始める
それは父からの性的虐待を受け始めたシグナルだった
ふと思ったが、虐待をする男は、息子をたぶん愛しているのだ
愛する者を毒牙にかける心理は、強烈な
自分を愛してくれという気持、愛情飢餓なんだろう
夫が息子を虐待している事を知った妻は、自らも
夫から異常な性行為や暴力を受け、夫と争う決意をするのだが
法廷でのやり取りは、読んでいて本当に腹が立った
法とは書くも融通がきかず役に立たないのかと。
幼い子どもが虐待されているのに、名士で表面的には
常識人の男に、法は有利にできている(と思わせる文章が続く)
小さな子どもが親という権力者から虐待された場合
逃れることがどんなにむずかしいか
最近の親の虐待で死亡する事件の数々からも、実感できる
この本・・・救いはないよ・・・ホント。覚悟して読んで下さい
2004/3/11
うつくしい子ども 石田衣良 文春文庫
九歳の少女を殺害したのは13歳の少年だった
彼は少女を吊るし乳首を噛んだ
少年の14歳の兄は、弟がなぜこんな事をしたのか
正面から見つめ、調べる決意をする
一方世間は加害者の家族に容赦ない仕打ちをする
マスコミの執拗な取材、学校でのいじめ・・・
逃げるように住居を変える家族にも、どこまでも食らいつく
小学生の妹にさえインタビューしようとするマスコミ
生活の為パートで働き始めた母を写真に捉える事も・・・
社会的制裁と人は言うが、親はともかく(育ててしまったから
責任がある)兄弟は何の罪もなかろう?
それを人は好奇の目で見る
罪のない子どもを殺した罰は
同じく罪のない子どもが贖うのか?
これを読み始めたのは、あの神戸の酒鬼薔薇事件の少年が
21歳になり近日出所するという報道からだった
(実際に今日出所した)事件から時が流れ
自分の子どもが被害者から、加害者の年齢になった今
加害者の親の心情に近づく気がする
加害者の兄弟はこの数年間さぞ辛かっただろう・・・
この本はフィクションでミステリーだから
ドラマティックな展開が待っているが
実際は、被害者にも加害者にも、時間は重く長くのしかかる
事件が風化すれば被害者の辛さも忘れ去られ
事件を思い出せば加害者は立ち直れない
犯罪とは両極の立場に人を置いてしまう最悪の行動だ
本の中で犯罪者の弟に兄が面会するシーンがある
弟は逮捕後の生活に慣れていった。弟は言う
「ここでは、朝起きてから夜寝るまでやることがすべて決まっているんだ
自分の頭で考える事もないし、すごく楽だ」
これはカルト宗教での信者の心理や
虐待で親の呪縛から解放されない場合の心理にも似ている
両者とも外部から救出されても
自分で考えるできなくなっている・・・・・・・
わたしは自分が一人っ子だが、この本のような
お兄ちゃんがいたらいいなとふと思った 2004/3/10