読書かんそうぶん
千年紀末古事記伝 ONOGORO
鯨 統一郎 ハルキ文庫
日本の神話をモチーフに日本人の生誕のなぞに迫る?????
っと思って手に取ったのだが・・・なんというか・・・その
神々の交わり(文字通り人間でいう生殖です)の部分が多くて
電車で読むと隣を気にしつつという(笑)
SF古事記伝というより、楽しんで、読んだらいい、という感じ
それにしてもギリシア神話モノも人間くさくて
恋愛や嫉妬渦巻くまさに、人間のお話が多いが
日本神話もまた、人間くさくて、庶民にわかりやすくて
私は好きだ
神は人の創ったものだから・・・と昔、言った人がいる
うーん、長い時を経てその言葉、よみがえった 2005/9/18
変身 東野圭吾 講談社文庫
不慮の事故で頭部を損傷した男が世界初の脳の部分移植をされた
しかし、術後彼の性格は以前とは違ってきて・・・。
現代医学では色々な臓器移植も行われていて
論議をかもしているが、さすがに脳の移植などはSF小説の世界の話
ただ移植がどこまで倫理的に許されるのか(医学的にどこでも可能だと仮定)
ちょっと興味深い
自分とは何だろう?
それは、今までの記憶を通して形作られたもので
体を支配する脳の中の、完成したパズルのようなのか。
自分はこうして育って、知識、体力、生活習慣、思考、嗜好・・・が
次々と指定の場所にピースが収まってゆく
でも、体は自分なのに、脳が、例え一部であっても他人のモノが
はめ込まれたなら、それは自分といえるんだろうか?
今まで臓器移植を肯定してきた私であるが
この小説は本当に、考えさせられた
頭の中をかき回された気分であった
※ 小説の中で主人公の男が術後、復帰した職場で
配置転換にあう。工場で働く彼だが新しい配置の場は
単調な作業の連続の「モダンタイムス」状態で
彼の脳に悪影響であった
あー、わかるわかる
体がなまる、というけれど脳だって、思考しなければ、ボケる!
残酷な仕事やなー ホント 2005/9/11
DVD 巷説 百物語 原作:京極夏彦 (東宝)
今回は本でなくDVDである
私がDVDを買うのはとても珍しい
映像世代ではないので、映像は一過性のものと思い
コレクションしたりしない・・・のだが・・・
ある時深夜TVを何気なく見ていたら
奇妙な映像が目に入ってきた
アニメらしいが、映像がヘンなのである
日本の昔の風景らしいが、中華街のような?町並みと
左右非対称の建物や、極太の筆で書いたかのような映像
なつかしいような、嫌な感じのような・・・
とにかくとても印象の強い映像であった
それでずっと見ていたら・・・ストーリーもとても
緻密で、でもグロくて、頭からはなれない
クギづけのままエンディングを見たらどこかで聴いたしぶーい歌声
あ!ケイコ・リーだ!!!(ザ・モーメント・オブ・ラブ)
それから気になって探しまくり見つけたのがこれだった
おー、京極夏彦だったんだぁ、原作。とひとり納得して
彼の雰囲気を壊すことなく、別の味を出したこのアニメ作品に
あらためて驚いた(小説はまた、別に味わってください)
どう考えても18禁の映像やストーリーだが(一話完結型)
大人で、グロい画に耐えられる方にはオススメ
ただし、やはり夜観て下さいませ 2005/9/3
蟲 坂東眞砂子 角川文庫
仕事を辞め家庭に入って、妊娠中の妻が時間を持て余しつつも
平凡な毎日を送っていたが、ある日夫が古い土器を見つけて
持ち帰ってから奇妙な夢や体験をする事となる
そして性格の変わり始めた夫の体から、這い出した虫・・・
全然この本と関係ないが(いつも。すみません)
私はほとんどのホラー映画を怖いと思ったことはない
流血で気持ち悪いとか、不意に現れる敵にびっくりとか
そういう程度である
特にハリウッド映画のホラーは最悪で「うぎゃー!」「きゃー!」
ってウルサイだけに思える
でも先日「呪怨」というビデオを見たらあ、これ怖いかも、と思った
どこが怖いかというと、普通の家の中の普通のシーンが「こわかった」
(ちなみに「呪怨」はビデオ版で映画ではありません。
私は映画よりビデオ版が怖かった)
日本のホラー作品のほうが、自分の日常とダブりやすいから
いいと言う事もあるかもしれないが。
小説もそうなのだが、敵が出てこない、ただの気配だけ
そういうのが私にはこわい。敵が見えたとたん、がっくりすることが
よくあるので、正体不明のこわさ、自分の中の想像のこわさ、が
好きだということかもしれない
で、本に話を戻すと、「蟲」という本は品のいいこわさ
質のいいこわさ、そんな感じの一冊である
ホラーは日本モノだよっ うん!)
2005/8/29
火の粉 雫井脩介 幻冬社文庫
殺人事件の被告から無罪となった男が、無罪判決を下した裁判官の
隣に引越ししてきた。男は、とても親切で、姑の介護に疲れている嫁の
手伝いで姑を看護したり、裁判官一家のハートをつかんでいく
だが、彼に疑問を抱いた息子の嫁の周囲で次々と不快な事が起こり
やがて彼女は孤立してしまう・・・
えー、これを読んだらお隣さんを、信用できなくなります(笑)
イイ人に見えても、中身はどうよ?と勘ぐると人間不信になりそうな一冊
ちなみに、一気に読んじゃいました。オモシロい!
思えば、人付き合いがいい、というのは協調性が高いという事で
たぶんこの複雑な社会では、一番必要な能力でしょう
みんな学校でも会社でも地域でも人間関係の悩みが一番でしょう?
そこをうまく出来れば、暮らして行くのはかなり楽になるはず
逆に言うとうまく人とやっていける人は
例え本当は悪人でも(笑)イイ人・・・なのです(?)
偶然これを読んだ日にサルが出ました(今流行のクマではありません
クマはこの辺はいませんので)明け方窓の外で人の気配がしました
起きてみると人のようなシルエット!
数日前には母親と子ども3人の殺人事件やら、高校生殺害やら
普通のうちが動機のよくわからない事件に巻き込まれているので
夜中や明け方の物音に敏感になっているこのごろですから
飛び起きましたよ!
急いでダンナや息子を起こして戦闘準備(まあ棒やらヌンチャクやら
模擬刀やら 笑)し窓をそっと開けると・・・
そこには幼稚園児くらいのサルがいました
それが・・・ふてぶてしいのです
人の家のベランダなのに自分の巣のように、私達を威嚇
シャーと歯をむき出しました。やがてこちらの人数にビビって
お隣に逃げたらお隣のベランダにウンチをして逃げていきました
それにしても、どこから来たんだ?飼っているウチなんてあるのかしら?
それにしてもサルでよかった、です
クマも日本各地で出ているようで被害にあった方はお気の毒です
でも、クマでもサルでも、ハチ(ハチも今年は多いらしいですね)でも
狂暴ですが、人間ほどではない
意味も無く押し入って殺害したり、放火したり
そんな事はクマはしない・・・飢えたから、危険を感じたから、人を襲う
生きる為の理由があるわけです
こんな物騒な世の中。この本を読んでいっそう人間不信になろう(笑)
2004/10/16
魔笛 野沢尚 講談社文庫
渋谷のスクランブル交差点で起きた爆破テロの犯人は
カルト宗教に、公安が送りこんだ女だった・・・
いきなり頭に浮かんだのは、もちろんオウムによる地下鉄サリン事件である
事件をベースにしたのは間違いない
オウムを題材にした作品は多いが,野沢氏の作品はちょっと違う
登場人物も、魅力的である
カルトの教祖は女性という設定だが、不自然さも感じないし
殺人犯の女性(子どもを殺した夫を殺害)に求愛し獄中婚した警官など
ありえない設定も、小説の醍醐味のように感じてしまった
一番のお気に入りキャラは爆破処理班の男である
爆破オタクらしく、彼は作業中に,本当は作りたいのに
処理する側になった事に苦笑していた
もちろん、彼のキャラからは,爆破をしそうな危うさは感じられない
爆発物に興味を持った子ども時代の話があっても
やってみたい、という願望を語っても
この人はやらない・・・という安心感
うまく言えないが,それって,社会人の第一歩だと思う
自分のスキな事と反対の事で飯を食っている・・・
多くの人は本当に自分の好きな事や目指すことを職にできていない
挫折や妥協を受け入れる,それが大人の通過儀礼
これを読んでいたら、中学3年生男子が、爆発物を作って警察に逮捕された
というニュースをやった。学校を爆破するつもりだったらしい
ふだんから塾を爆破するとか、誰と誰を残してみんな殺ろす、とか
陰湿な性格ではあったらしいが、今回は母親が警察の主催する電話相談に
電話した事から事件は未然に防げたという
お母さん、よくぞ気がついたね
私も息子とよく話す(と思っている)から、息子の悪事はわかるとは思うけど
色々な事件で親は子どもの行動にまったく気がつかなかった、と言うから
本当は、見つけにくいのかもしれない
子どもだって、マズイところは隠そうと知恵を出すだろうし・・・
ところで。この中学生の作った爆弾は、殺傷能力もあるそうだ
爆弾そのものにも彼は興味があったらしいから、うまく作ったのかも。
また作り方はインターネットで調べた(またネットが叩かれる)
大抵のことは、調べられるよね
爆発物は作るだけであっても、重大犯罪で罪重い
興味があるのはし方がないが、アタマだけに留めて欲しいものだ
2004/10/6